日本と国交が断絶している北朝鮮の最先端デパートやモールに、大量の日本製品があるという。なぜなのか。辺境リポーターの大熊杜夫さんは「中国からの迂回ルートが作られている可能性が高い。日本企業は注意する必要がある」という――。

平壌にある最先端デパートのカード

今、北朝鮮の首都・平壌で、大きな変化が起きている。それを象徴するのが、平壌にある「(人の名前)愛国仙内館」(※1)という日本製品が揃うデパートのカードだ。

「(人の名前)愛国仙内館」の会員カード。店名の人名部分、カード番号の一部は筆者が伏せた。
筆者撮影
「(人の名前)愛国仙内館」の会員カード。店名の人名部分、カード番号の一部は筆者が伏せた。

表面の上部には「(人の名前)愛国仙内館」、下部には12桁の会員番号が書かれている。そして裏面には、店舗の住所と電話番号、「アムナル(朝鮮語で将来という意味)電子商店」というネットサービスと思しき表記の左に、驚くべきことに日本語で「みらい」と書かれているのだ。これはどういうことなのか。

事情通によれば、この店名の一部になっている人の名前は関西の在日コリアンのもので、以前は北朝鮮への日本製品の輸出でよく知られた存在だったという。

しかし北朝鮮は、2020年に新型コロナウイルスが流行して以降、いまだに国境封鎖を続けている。2024年の夏には在中北朝鮮人の往来、中国人向けのビジネス・留学を目的とした往来を限定的に認め、またつい先月には中朝間の国際旅客列車が運行を再開するなど、徐々に人的往来の拡大に向けた動きがあるものの、依然として国境の全面開放に至っていない唯一の国だ。しかも、日本と北朝鮮には国交がなく、2006年以降は経済制裁のために輸出入が禁じられている。

それなのに、平壌のデパートに日本製品、日本語が記された会員カードがあるのはなぜだろうか。

※1 愛国仙内というのは平壌市内の地名。

「愛国仙内館」はどんな店なのか

まず、「愛国仙内館」が、どのような店なのか見ていこう。北朝鮮との取引のために定期的に訪朝しているという中国貿易商が、中国版TikTokである「抖音(ドオイン)」で詳しく紹介している。

高級外車がずらりと並んだ平面駐車場を抜け、1階のエントランスから店内に入ると、お惣菜やお弁当を売るコーナーがあり、キンパやプルコギなどに混ざって、日本のエビフライや日本式ソーセージ、さらには写真のように立派なパック寿司までもが売られている。隣接する冷凍食品コーナーには、日本語で「ししゃも」や「(日本のメーカー名)オリジナルしめさば」と書かれた魚、「ステーキ」と記載されている冷凍肉などがあり、日本にいるかのようだ。

筆者が抖音(ID:7435093034557001019)で入手した画像を見ると、まさに日本と同じようなパック寿司だ
筆者提供
筆者が抖音(ID:7435093034557001019)で入手した画像を見ると、まさに日本と同じようなパック寿司だ

これには中国貿易商も「ここには日本製品しかありません」と感嘆していた。地下は、ドラッグストアのようだ。商品棚には日本の化粧品が所狭しと並び、日本の100円ショップからそのまま仕入れたような米びつやプラスチック製の食品収納ケースが山積みになり、棚にはマンダムの「ギャツビー」などの制汗剤、下の写真(写真1)のようにエステーの「ムシューダ」といった衣類用防虫剤までが所狭しと並んでいる。

防虫剤「ムシューダ」がズラリと並んだ棚。抖音(ID:7435093034557001019)より入手したもの。
筆者提供
【写真1】防虫剤「ムシューダ」がズラリと並んだ棚。抖音(ID:7435093034557001019)より入手したもの。

次に訪れたのは家電コーナー。ここでは日本のパナソニックのテレビやトレーニングマシン、炊飯器や電子レンジまでが混ぜこぜに売られている。ディスカウントストアではないが、店内の様子は日本のドン・キホーテに似ている。