どうやって日本製品を仕入れているか

では、彼らはどうやって日本製品を仕入れているのか。平壌の留学生K氏によれば、「愛国仙内館や楽浪愛国金剛館は朝鮮総連と『KKG』の合弁事業で、在日コリアン企業のみらいが仕入れを担当していると言われている」と話す。KKGとは、北朝鮮に所在する「金剛総会社」と呼ばれる会社であり、様々な事業を展開している財閥のようなもので、朝鮮労働党の外貨獲得機関ともいわれている。

そして非常に興味深いのは、この会社は中国に幾つか支店・支社を有していることだ。中国の会社登記システムで調べると外資系企業の「朝鮮金剛総公司」という名目で、延吉、丹東、大連にそれぞれ営業所を持っていることが確認できた。

また先日、筆者がこの登記の現地を訪れた際、この住所には金剛の営業所のみならず、「国際運輸公司」を名乗る中国企業も入居していた。またこれらの業者が入居する国境沿いの雑居ビルには、北朝鮮の有名ブランド「大同江ビール」の中国総代理店など、明らかに北朝鮮と深い関係を持つ企業が複数入居していた。恐らく、もともと中国に輸出されている日本製品や日本の市場にある商品を、このような中国の「国際運輸公司」などが隠れ蓑となって買い付け、それを金剛などの管轄で北朝鮮に輸出するという迂回輸出のスキームが作られている可能性が大きい。

実際、エステーとサンガリアに北朝鮮で製品が売られていることについて問い合わせたところ、「北朝鮮への直接輸出は行っておりません。第三者による流通の可能性が考えられます」(エステー)、「弊社において北朝鮮での販売状況は把握しておりません。弊社は主に日本国内のお取引先様への販売を行っており、北朝鮮への直接的な輸出・販売は行っておりません」(サンガリア)との回答があった。

深刻なノースコリアリスクの現実

平壌のデパートに溢れる日本製品の数々。「北朝鮮にも日本製品があるなんて」「日本製品はどこでも人気だ」などと驚いたり喜んだりしてはいられない。その裏には、中朝国境地帯でうごめくダミー会社の存在があり、迂回輸出の問題があるからだ。

日本から中国の大連や丹東の「国際運輸公司」や「貿易会社」へ、正規のルートで輸出されたはずの自社製品。しかし、その取引先が実は北朝鮮の特権階級と結びつくダミー会社であった場合、日本企業は知らぬ間に北朝鮮の「抜け穴」に加担し、ひいては党の資金獲得機関を潤すエコシステムに組み込まれてしまうことになる。

北朝鮮への輸出は、重工業製品や化学製品、機械などの場合は国連制裁の対象だ。また日本においては、全ての製品の北朝鮮への輸出が法律で禁じられている。この状況下で、北朝鮮に自社製品が大量にあり、そのルートが迂回輸出によるものとなれば、企業が被る信用ダメージは計り知れない。「相手は普通の中国企業だと思っていた」「最終消費地が平壌だとは知らなかった」という言い訳は、国際社会の厳しいコンプライアンスの網の目の中ではもはや通用しないのだ。

コロナ以降、物流を取り巻く環境は大きく変わり、北朝鮮への迂回輸出ルートもより巧妙になっている。我々からすれば、国境が閉鎖された北朝鮮と関わる機会などないと思いがちだが、複雑化する国際取引において、その可能性はゼロではない。日本のビジネスパーソンは、こうした「NK(ノースコリア)リスク」が潜んでいるという事実を知っておくことが大切ではないだろうか。

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