安心して最期を迎えられる場所を、どう見定めるか。「持ち家が重荷になることもある」と専門家は言う。多くの選択肢の中からベストな住居を選ぶ方法は――。

毎月25万円を払える人も「高齢」を理由に転々とした

【山本】高齢者の約3人に1人が、年齢を理由に賃貸住宅への入居を断られた経験がある――当社が2025年7月に実施した調査では、このようなショッキングな結果が出ました。これはあくまで「年齢だけ」を理由に断られたケースであり、「収入が不安定」「身寄りがない」といった別の理由で断られた人まで含めると、人数はさらに増えます。また、その調査の時点から過去1年以内に部屋探しをした高齢者に対して部屋探しの苦労度合いをたずねたところ、「苦労した」と答えた人は6割以上にのぼりました。

お金があっても、親族が近くにいても、「高齢」というただ一点で断られてしまう。それが、高齢者が直面する部屋探しの実態です。先日、「部屋が見つからない」と当社にご相談にいらした人は、最終的に家賃25万円の部屋を契約することができました。裏を返すと、毎月25万円を払えるだけの経済力があるにもかかわらず、それまでに何度も断られ続けていたのです。

「高齢者は賃貸住宅を借りにくい」という事実は、不動産や介護の業界では以前から当たり前の話でした。しかし、私が事業を始めた15年頃まで、世間ではほとんど話題になっていませんでした。ここ数年でようやく一気に知られるようになったものの、何十年も住んだ家を売って引っ越そうと物件を探し始めた高齢者が、壁にぶつかって驚くケースが後を絶ちません。

では、なぜ大家や不動産会社などの貸主は、高齢者に部屋を貸したがらないのでしょうか。彼らの懸念としては「孤独死・家賃滞納・認知症・死後の残置物」の4点が挙げられます。

このうち「家賃滞納」は、実は貸主側の幻想です。これまで高齢者に部屋を貸した経験がない大家さんが、漠然とした不安を抱いているにすぎません。

家賃債務保証会社の調査によると、家賃の滞納率は、むしろ高齢者のほうが現役世代よりも低いことがわかっています。高齢者には安定した年金収入がありますし、現役世代に比べれば大きな出費も少ない。急な入院などがない限り、収支のバランスが急に崩れるイベントが起きにくいのです。加えて、一度滞納すれば次の部屋を借りにくくなりますから、ほとんどの高齢者はきっちりと期日までに家賃を支払います。

したがって、残る課題は、孤独死・認知症・残置物の3つ。これらも、解決に向けて着実に動いています。

そもそも私たちが事業を始めた15年当時は、入居者が自然死した場合に「事故物件」にあたるのかどうか、その定義すらありませんでした。会社によって判断がバラバラだったのです。

明確な線引きができたのは、21年。国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表し、「老衰や病死などの自然死は、原則として買主・借主に告げなくてよい」という共通の目安ができました。

さらに25年には住宅セーフティネット法(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律)が改正され、都道府県から指定を受けた「居住支援法人」が、亡くなった入居者の残置物を処分したり、賃貸借契約を解除したりできるようになりました。

(構成=堀尾大悟)