誰もがいつか「ひとり」になりうる時代。アンケート調査で、本当の困りごとと備えの急所が明らかになった。
老後「ひとり派」は、なんと半数――当事者では約7割
【図表】Q1 老後の生活は、ひとりで暮らすのがいいですか、誰かと暮らすのがいいですか

ひとりの暮らしは慣れるほどラクになる

14年後、高齢者のおよそ4人に1人がひとり暮らしになる――。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、65歳以上の独居率は2040年に男性24.2%、女性28.3%へ上昇。65歳以上の単独世帯は738万から1041万世帯へ、約1.4倍に膨らむ。

かつて寂しさの象徴だった「孤独」や「おひとりさま」も、今や積極的に楽しむ対象へと変わりつつある。とはいえ、老後は健康、介護、お金、身元保証、孤独死と、不安は尽きない。ひとりで過ごす老後は、どのような生活なのか。本誌は読者にアンケート調査を実施し、2900人から回答を得た。そのうち同居家族ありが2052人、ひとり暮らしが848人。ひとりになった背景は、死別や離婚、生涯独身など多様だ。

向き合い方
8割が覚悟する「いつかひとり」は、実は怖くない
【図表】8割が「いつかひとりになる」と考える
【図表】9割超が「ひとりが好き」
【図表】結婚しても2割が今はひとり暮らし
【図表】7割は「今は誰かと暮らす」
【図表】「ひとりになる日」は20年以内が7割

まず、老後の暮らし方を尋ねたQ1から見ていこう。全体では「誰かと暮らすのがいい」がわずかに上回った。ところが、実際にひとりで暮らす当事者に限ると、67.3%が「ひとりで暮らすのがいい」と答え、割合は逆転する。案じているのは未経験の人で、当事者ほど「ひとり」を満喫しているのだ。

Q2では、「自分もいつか必ずひとりになる」と意識したことがある人が8割にのぼり、Q3では当事者の9割超が「ひとりが好き」と答えている。Q6を見ると、その日が「20年以内に来る」と考える人は7割にのぼった。多くの人が、いつか訪れる「ひとり」を覚悟していることがわかる。

困りごと
恐れるのは「寂しさ」、現実の壁は「手続き」
【図表】「ひとり暮らしは寂しそう」はただのイメージだった
【図表】「困りごと」の不安とリアル
【図表】「保証人の壁」1位は入院・手術
【図表】ひとり歴10年で5人に1人が困る
【図表】子供より他の親族のほうが頼れる

ひとり未経験者と当事者の差は、「不安なこと」と「実際に困ること」とのギャップから生まれるといえるかもしれない。Q7では、同居家族がいる人が思い描く「ひとりの困りごと」の想定と、ひとり暮らしの人の実体験とを並べた。「話し相手がいない・寂しい」は、想定では39.2%と高いのに、実体験では19.5%と半分程度になる。恐れていた寂しさは、実際にひとりで暮らすとあまり気にならないのだ。

満足度
ひとり歴が長くなるほど生活は楽しい
【図表】よかった1位は「自分のペースで時間を使える」
【図表】ひとりでも9割が今の暮らしに「満足」
【図表】ひとり歴10年以上は9割超が満足
【図表】8割超が「ひとりでも平気」
【図表】ひとり時間は「足りている」が7割
【図表】孤独を感じるのは「自分が病気のとき」

ひとりになって初めてわかる心地よさもある。エッセイストの岸本葉子さん(『プレジデント』2026年8月14日号、54ページ。以下同)は、ジムや句会の仲間と、名前も職業も知らないまま緩やかにやり取りする関係が心地よいと語る。Q11で「よかったこと」1位が「自分のペースで時間を使える」89.6%だったことにも、それは表れているのではないだろうか。

しかも、ひとりの暮らしは慣れるほどラクになるようだ。Q12ではひとり暮らしの9割が今の暮らしに「満足」と答えた。Q14を見ると、死別や離別でひとりになった人でも、8割超が「今は平気」と回答している。象徴的なのがQ13だ。ひとり歴3年以内で満足は81.8%、4〜9年で89.9%、10年以上では92.9%と、ひとりに慣れるほど満足する割合が増えることがわかった。

保証人がいないことで困るシーンは多い

一方で、時間が経っても消えない壁もある。「手続き」だ。Q7を見返すと、「寂しさ」が想定を大きく下回ったのとは対照的に、「死後の手続きを頼む相手」や「入院・緊急時の保証人・身元保証」は当事者も実際に困っている。Q8でも、不安を感じる場面として「入院・手術の同意」や「救急搬送」が上位に並んだ。入院にも救急にも「保証人の壁」が立ちはだかる。

その壁は、ひとり歴を重ねるほど現実味を帯びる。Q9を見ると、ひとり歴が10年を超えると、5人に1人が「ひとりゆえに困った経験がある」と答えている。寂しさには慣れても、手続きの問題だけは、経験を重ねるほど身に染みてくるようだ。

では、いざというとき誰を頼るのか。Q10で当事者に「頼れる人」を尋ねると、最も多かったのはきょうだいや親戚。次いで子、3位に友人が挙がった。なお、全体では子が62.2%で1位だった。ひとりになると頼り先が変わることがうかがえる。

(文=本誌編集部 図版作成=大橋昭一)