資産は十分にあるからこそ
「使い切れない」リスクに向き合う
木下さん(67歳男性)
独身/分譲マンション所有(ローン完済)
●金融資産:2500万円(預金1500万円+新NISA700万円+iDeCo300万円)
●年金:月14万円(厚生年金)
●月支出:約20万円(趣味・交際費にゆとりあり)
資産を使う順番を3つに分けて考えよう
木下さんは67歳の独身男性。分譲マンションに一人で暮らし、住宅ローンは払い終えています。年金は月14万円。金融資産は2500万円で、内訳は預金1500万円、NISA口座に株・投資信託が700万円、iDeCoが300万円あります。月の支出は約20万円ですから、年金だけでは月6万円が足りません。この不足分を毎月貯蓄から取り崩しています。
蓄えが十分あるので、月6万円(年72万円)ずつ取り崩しても、使い切るのは34年先。株や投資信託の運用が安定的に回れば、その期日はさらに延びるでしょう。つまり、木下さんは現時点で「100歳までお金が尽きない」条件を満たしていることになります。
この場合、考えるべきことはお金が足りなくなることではありません。人生を終えるまでに資金を使い切れるか、そしてうまく遺せるかです。もちろん使い切れなくても困りませんが、独身で子どもがいない場合、法的には父母・祖父母、兄弟姉妹(亡くなっている場合はその子である甥・姪まで)に相続権が移ります。法定相続人がいなければ、特別な縁故があった人(長年介護をした人や事実上の家族など)が、財産の全部または一部を受け取れることがあります。そうした人もいなければ、最終的にその財産は国庫に帰属します。
自分が亡くなった後のことまで考えなくても、という方もいるかもしれませんが、自分が人生を懸けて積み上げてきた資産です。自分の希望を反映させたいと思う人も多いでしょう。資産が潤沢にあるおひとりさまは、使い切れなかった場合にどうするかも考えておいたほうがいいかもしれません。
まずは自分が生きている間の、資金の取り崩し方を考えます。特に木下さんのように預け先が銀行、証券会社、iDeCoなどに散らばっている場合はなおさらです。そこで口座の整理から始めます。使っていない口座はまとめておけば全体像が掴みやすくなり、資金移動も楽になります。閉鎖手続きは思いのほか時間がかかるので、早めに着手しましょう。
次に「取り崩す順番」を決めましょう。基本は「課税される口座から」です。木下さんの場合は預金から使います。証券会社にある資金はNISA口座で運用されているので、配当にも売却益にも税金がかかりません。こちらに手をつけるのは後回しです。ただし機械的に守る必要はなく、株が高値なら売って利益を確定し、下がっているときは預金から崩すなど、臨機応変に使い分けるのもありでしょう。
iDeCoは75歳までに受け取りを始める必要があります。一時金と年金のどちらで受け取るかで税金が異なりますので、受け取り方を早めに検討しておきましょう。
資産は、使う時期で3つに分けて考えると整理できます。すぐ使うお金、5年から10年のうちに使うお金、当面は使わないお金です。すぐ使うお金は、預金に置いておきます。当面使わないお金は「個人向け国債(10年変動)」などで持っておくと、物価が上がっても価値が目減りしにくいです。
時間をかけもう少し増やしてみたいお金は引き続き、NISAで運用を続けてもいいでしょう。ただし、短期で増やそうなどと狙わず、分散が効いてリスクが抑えられた投資信託を選べば安心です。
高齢の独身者にとっての不安要因は、認知機能の低下によって、正しい判断ができなくなることです。厚生労働省によると、22年時点で認知症の人は国内に約443万人。軽度認知障害(MCI)を含めると1000万人を超えると推計されています。もはや誰にとっても人ごとではないはずです。そして、認知症になって最も困るだろうことの一つが、お金の管理です。
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