立地がいい持ち家の「押し買い」に要注意
ひとりで迎える老後には、どうしても不便なことや、心細いこともあるだろう。だが、最期まで暮らす場所――「終のすみか」の見通しが立っていれば、それは大きな安心材料の一つになるはずだ。持ち家に住み続けるか、賃貸に移るか、あるいは高齢者施設に入るか。住み替えるならいつにするのか。
まずおさえておきたいのが、日本の高齢者の多くは持ち家に暮らしているという事実だ。総務省の「住宅・土地統計調査」によれば、高齢者がいる世帯の住まいは、一戸建てとマンションを合わせて8割以上が持ち家である。
実際、「持ち家があれば、いざ介護が必要になって高齢者施設に入るとき、売却して入居金にあてられる」という理由で、現役のうちの住宅購入をすすめる向きもある。持ち家は老後の備えになる――そう信じている人は少なくないだろう。ひとりでの老後に備えて、持ち家がない人は今からでも家を買っておくべきなのだろうか。
この問いに対し、高齢者の住まいに詳しい2人の専門家は、そろって慎重な答えを口にした。高齢者の部屋探しを専門に手がける「R65不動産」の山本遼氏と、これまで1万人以上の施設入居相談に携わってきた「シニアの暮らし研究所」の岡本弘子氏だ。
まず岡本氏が指摘するのは、持ち家のある人のほうが有利だとは限らないという現実である。
「元気なうちは想像できないかもしれませんが、人の手を借りなければ暮らせなくなるときが、いつか必ず訪れます。持ち家を終のすみかにできるとは限らないのです。そうして施設に移ることになった場合、自宅が空き家のまま残っていると、維持費や管理の手間がかかり続けてしまう。持ち家があること自体が、かえって重荷になってしまうことがあるのです」(岡本氏)
自分を守ってくれる資産だと思っていた持ち家の存在が、いつのまにか負担に転じる。それが高齢期によくあるひとつの落とし穴だという。子どもが独立し、配偶者に先立たれ、広すぎる家にひとり。庭の手入れや家の修繕に苦労しているという声も少なくない。では、老後のことを考えると、持ち家を購入するのは一切やめたほうがいいのだろうか。
「もちろんそんなことはありませんが、中高年の方がこれから家を買うのなら、いざというときにきちんと売れて、しっかり値段がつく物件でなければ難しいでしょう。駅からのアクセスが悪かったり、敷地の形が使いにくかったりすると、売るに売れず、施設に入っても自宅が空き家のまま……ということになりかねません。『売って入居金に』という計画は、思いどおりに運ぶとは限らないのです」(同)
一方、賃貸住宅事情に詳しい山本氏が挙げるのは、持ち家を手放して賃貸に移るという選択肢の利点だ。
「自宅を売却して賃貸に移れば、まとまった現金が手元に残ります。その分、旅行や趣味に使うなど、老後の暮らしの自由度は高まる。資産を住まいに固定してしまわない、という考え方もあるのです」(山本氏)
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