返答が的外れ、話が平行線、何を言っても響かない……。時に会話が成立しない相手がいる。どうすればすれ違わずに意思疎通ができるのか? 深い対話を得意とする4名がその方法を伝授する――。
タイプ④:「昔はそうだった」が最強の根拠
聞く耳持たず地蔵タイプ

「スマホがない時代は自由でよかった」「どうして男が座って用を足さなくちゃいけないんだ?」……。

過去を振り返って「昔はよかった」と懐かしむ人は少なくない。個人で懐かしむ分には勝手だが、行動の刷新やルールの変更を呼び掛けても耳を傾けてくれず、困ってしまうことがある。

津田氏は「クレーマーによく見られるタイプです。かつて大勢の部下を率いていた大企業の管理職、大学教授、医者など、インテリの成功者が多い」と指摘する。

「でも、昔にこだわる頑固さは弱さの裏返しなんですよ。心の底で時代とズレているという不安を抱えているから、『自分は間違えてないんだ』と強がる。自分が変われないことを自分のせいにしたくないから、周囲や時代が悪いんだと考えるのです」(津田氏)

このタイプは2つのバイアスが強い。ひとつは、慣れ親しんだ状態が変化することを嫌う「現状維持バイアス」。「信じてきたことが崩れる不安を抱えて、行動したことへの後悔を避けたがる」(西氏)傾向の持ち主だ。

もうひとつが「サンクコストバイアス」である。たとえば、購入した本が読み始めて数ページで愚作だと気づいても、払ったお金がもったいないから読み進めてしまう。かけてきたコストがムダになることを恐れて、本来は合理的ではない行動を正当化しようとする心の傾向である。この2つのバイアスから、失うことを極度に恐れて、安定や安心を望む気質が強いと言える。

自分の意見をさりげなく差し込める接続詞とは?

過去が黄金時代で、その記憶が固定化されている「聞く耳持たず地蔵タイプ」。そぐわない意見を受け入れてもらうのはいかにも難しそうだが、どのようにアプローチすればいいのか。

「まず、ロジックで説得を試みようとしてはいけません。相手も自分もお互いの正義を持っていて、どちらも正論を述べていることがありますよね。その場合、プライドが高いから自分の主張を曲げず、考えをより強固にしてただただ衝突するしかなくなります。

対応の基本は、おだてることです。『よく知っていらっしゃいますね』『勉強になります』などのフレーズで、まずはプライドをくすぐる。自分とは異なる考えでも、『ご意見ありがとうございます』と感謝して相手の顔を立てましょう。そうやって相手のガードを下げてから、自分の意見を少しずつ提示していくのです」(津田氏)

意見を提示するうえで注意したいのは、「でも」から入ることだ。それまで気分よく話をして距離が縮まったとしても、その言葉で「否定された」と感じて心が離れてしまう。

(構成=増田忠英 イラストレーション=伊野孝行)