ミステリーの女王が「自分という謎」に迫る

自分は周囲からどう思われているのか。それは誰もが気になるところでしょう。とはいえ、普段はこの問題についてじっくり掘り下げる時間もないので、気になりつつ考えるのをやめてしまう人が大半ではないでしょうか。

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自分を知ることは大切だとよく言われます。しかし過去を振り返り、自らを客観的に見つめ直すのは容易ではありません。特に自分にとって都合の悪い記憶は、無意識に封じ込めようとするので、本当の自分に辿り着ける人は限られるはずです。

アガサ・クリスティーの『春にして君を離れ』は、図らずも自分の人生を顧みることになった女性を描いた小説です。「ミステリーの女王」と称される著者としては異色の作品で、殺人事件が起こるわけでもなく、一人の女性がひたすら記憶を辿りながら、自分という謎に迫っていくのが本作の面白さです。

(構成=塚田有香 撮影=川しまゆうこ イラストレーション=米山夏子)
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