群馬県藤岡市の町工場が、即席ラーメンの“麺”を作る機械で世界シェア1位に立つ。日本生まれの即席ラーメンはいま世界の“国民食”となり、創業80年のこの会社が世界の胃袋を支えている。なぜ地方の町工場が世界に選ばれるトップ企業になれたのか。ライターの前屋毅さんが、製造元の冨士製作所・櫻澤誠社長に聞いた――。(前編)

世界中で国民食になった「即席ラーメン」

即席ラーメンは日本の“国民食”――そう言っても異論はないはずだ。その即席ラーメン文化を支えている会社がある。群馬県藤岡市に本社と工場を置く冨士製作所が、その会社だ。

JR高崎駅から車で20分ほどの場所にある冨士製作所の本社ビル
撮影=プレジデントオンライン編集部
JR高崎駅から車で20分ほどの場所にある冨士製作所の本社ビル

国民食である即席ラーメンだが、日本が世界一の消費量を誇っているわけではない。即席ラーメンの歴史は、1958年に日清食品の創業者である安藤百福が「チキンラーメン」を開発して発売したことに始まる。以来、さまざまな即席ラーメンが登場し、いまでも新製品が生まれつづけている。その人気は世界にも広まり、消費量で日本を上まわる国も存在しているのだ。

世界ラーメン協会が2025年5月に発表したところでは、2024年の即席ラーメンの世界一の消費国は中国・香港で438億食となっている。次が日本かと思えば、残念ながらそうではなく、2位はインドネシアの146億食だ。そして3位が、83億食でインドである。2位と3位の数字と比較すれば、1位の中国・香港の消費量がいかに多いかがわかる。

ただし、「国民1人あたり」となると話が違ってくる。国民1人あたりの年間消費量で世界一は、約81食でベトナムなのだ。国民全員が、約4日に1度は即席ラーメンを食べている計算である。2位は韓国で約79食、3位はタイで約58食と続いている。人口の多い中国・香港は全体の消費量では断トツのトップでも、1人あたりとなるとランキングのベスト5にもはいってこない。

いったい日本はどれくらいのところにいるのかといえば、年間消費量では2024年が59.8億食で世界5位である。これを日本の人口約1億2400万人で割ると、1人あたりの年間消費量は約50個ということになる。1人あたりの消費量でも、3位のタイを下まわっている。

世界的にはそういう状態の日本で国民食といわれるくらい普及しているのだから、ベトナムや韓国、タイなどでも、もはや国民食的存在だろうと想像できる。