AIが急速に進化している。これからのビジネスはどう変わるのか。前LINEヤフー会長の川邊健太郎氏は「インターネットが登場してからの30年で起こったパターンは、AI時代においても形を変えて起こりえる」という。初の著書『7つの激変』(東洋経済新報社)を上梓した川邊氏に、ライターの堀尾大悟さんが聞いた――。
前LINEヤフー会長の川邊健太郎氏
撮影=遠藤素子
前LINEヤフー会長の川邊健太郎氏

LINEヤフーの会長室に集結した「武将」たち

意外にも、川邊氏にとっては初の著書である『7つの激変』。その構想が立ち上がったのは、1年前の2025年の春先だった。

「私が1995年に起業してからちょうど30年。その節目に、インターネットという技術がいかにして世の中を変えていったのかを、『こんな面白いことがあったんだよ』と多くの人に知ってほしい、という純粋な動機がありました」

同年5月、川邊氏の声かけのもと、インターネット産業の草創期を知る起業家たちがLINEヤフー社の会長室に集結。この30年間の史実を棚卸し・検証する「ブレスト」からプロジェクトは始まった。

小澤隆生氏(元ヤフー社長、現Boost Capital代表取締役)、川上量生氏(ドワンゴ創業者)、古川健介氏(けんすう、nanapi代表取締役)、児玉太郎氏(元フェイスブック・ジャパン代表)などネット戦国時代の「武将」たちの証言を得ながら、まさに歴史書を編纂するようなプロセスで本づくりは進む。そして最終的に「検索」「動画」「文化」など「7つの物語」の形で一冊に収められた。

「風が吹けば桶屋がもうかる」ネット史の面白さ

川邊氏の中には、理想像として思い描いていた書籍があった。『世界をつくった6つの革命の物語』(スティーブン・ジョンソン著/朝日新聞出版)。「ガラスの技術がいかに極細の光ファイバーへと進化し、現代の情報社会を支えているのか」など、産業と文明の意外な進化史を超長期視点で解き明かした本だ。

「えっ、あのAという技術が、巡りめぐってZという巨大市場につながったの?」
「出始めの頃は見向きもされなかったあのサービスが、のちの世の中を支配するなんて… …」

そんな「風が吹けば桶屋がもうかる」みたいな話が、インターネット30年の歴史にはゴロゴロと転がっています。SNSしかり、eコマースしかり、ネット広告しかり。当初の想定や期待どおりに進化・発展した事例はほとんどありません。

欲望と、執念と、誰かの思いつき。それらの奇跡的な交錯が、誰も意図しなかった進化を生み、インターネットを「金の成る木」に変えた。そして、世界を変えてきたのです。(『7つの激変』「はじめに」より)

「一過性のトレンドを紙に印字しても、すぐに陳腐化してしまいますよね。だからこそ、『古典』として長く読み継がれる一冊にしたかったんです」