「歴史はくり返さないが、韻を踏む」
SNSでつぶやかれる『7つの激変』の感想でも、ひときわ多く引用される一節がある。「歴史はくり返さないが、韻を踏む」――アメリカの作家、マーク・トウェインのものとされる言葉だ。
これまでの30年間で起こったパターンは、AI時代においても形を変えて起こりえます。
だからこそ、私がこの世界で見てきた失敗や成功の歴史、カオスな時代の歩き方を、これからAIという荒野に向かうみなさんに伝えておきたいと思ったのです。(同書「はじめに」より)
インターネット産業史に通奏低音として流れる「韻」。それが、本書にはさまざまなキーワードとともに示されている。
その一例が「イノベーションのジレンマ」だ。ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」は、「コンテンツ・アグリゲーター」(自らはコンテンツを作らず、各メディアから提供を受けた情報を集約して届ける存在)としての盤石な地位とビジネスモデルを築いたがゆえに、SNSに代表される「Web2.0」やスマホシフトへの対応の時機を逸した。
また、違法アップロードだらけの「無法地帯」だったYouTubeが熱狂の中心地となる一方、最初から安全でクリーンな場所を掲げたヤフーの動画サービスは、結果としてユーザーの支持を得られなかった。そこから導かれる冷徹な教訓が「清き流れに魚棲まず」だ。こういった「敗戦の弁」まで赤裸々に語られているのも、本書の特徴だ。
「AI屋がやる○○ビジネス」は必ず勝つ
さらにもうひとつ、インターネットの史実から導かれる「韻」が「ネット屋がやる○○ビジネスは、○○屋がやるネットビジネスに必ず勝つ」という法則である。リアル産業のプロがネットに進出するより、ネットのプロがリアルに進出するほうが成功確率ははるかに高い。最大手の書店がAmazon(アマゾン)になれず、百貨店が楽天になれなかった理由が、この一行に凝縮されている。
ところが川邊氏は、この「ネット屋」を連戦連勝に導いた必勝パターンが、これからは皮肉にも自分たちに刃を向けるという。つまり、「ネット屋がやるAIビジネス」よりも「AI屋がやる○○ビジネス」が必ず勝つという、新たな法則への転換だ。
なぜなら、私たちが30年かけて築き上げてきた「PVの稼ぎ方」「UI/UXの最適解」「広告モデルの収益化」といった“成功の方程式”こそが、AI時代には不要な「足かせ」となるからです。
かつて私たちは、壁の外側から中の人たちを「既得権益」「オールド・エコノミー」と呼び、戦ってきました。そして、彼らが過去の成功体験に縛られている様子を冷ややかに見ていたものです。
しかし、市場規模が約30兆円にも達したいま、インターネット産業こそがまぎれもない「既存産業」であり、守るべき「既得権益」です。(同書「おわりに」より)

