今年7月30日、山口県の工場で台湾高速鉄道の新型車両「N700ST」が披露された。日立と東芝の企業連合が製造を担い、12編成の総額は258億台湾ドル(約1260億円)にのぼる。一方、日本の新幹線技術を導入するはずだったインドの高速鉄道計画は、開通が大幅に遅れ、車両の調達も価格や納期で折り合っていない。なぜ台湾は、高くても再び日本製を選んだのか。海外メディアの報道から、両国の選択を分けた背景をたどる――。
山陽新幹線の岡山 - 相生間を走行する、JR東海・N700S系J30編成による東京行きの「のぞみ」4号
山陽新幹線の岡山 - 相生間を走行する、JR東海・N700S系J30編成による東京行きの「のぞみ」4号(写真=MaedaAkihiko/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

約20年ぶりに現れた新型車両

山口県の工場で、真新しい列車が姿を現した。今年7月30日、台湾高速鉄道の新型列車「N700ST」のロールアウト(お披露目)式典でのことだ。現行型700Tの後継となる。

式典には、故・安倍晋三元首相の妻、安倍昭恵氏が出席。台湾と日本の強い友情を示すために来たと述べ、台湾南部・高雄市の紅毛港保安堂に建つ夫の像を、この列車で訪ねたいと語った。

日本政府からは、現職の佐々木紀国土交通副大臣が出席。台湾英字日刊紙の台北タイムズによれば、7月28日に発生した熊本地震の対応に追われていなければ、金子恭之国土交通相が足を運ぶ予定だった。

同紙は、22年前との違いに注目する。22年前に開かれた同様の式典で日本側から出席したのは、すでに閣僚を退いていた扇千景元運輸相だった。今回、同紙の取材に応じた関係者は「22年前と比べれば、外交上の大きな前進だ」と述べる。「彼らがどれほどの外交的圧力を受けたかは、想像がつくだろう」とも語った。詳細には触れなかったが、台湾を独立国家として承認していない中国を念頭に置いているとみられる。

なぜ日本政府は、台湾高鉄の新型車両調達にこれほど重きを置くのか。関係者の一人は、台湾こそ日本の新幹線が他国へ輸出され成功した実例だからだ、と答えている。

実際、車両から信号、運行管理までを含む日本の新幹線システムが、一式で海外に導入され営業運転しているのは台湾だけだ。2007年の開業から19年。台湾高鉄は輸送力の増強に向けて新型車両12編成を、再び日本のコンソーシアム(共同事業体)に託した。

元経産副大臣が投稿した「インドへの不満」

新幹線の海外展開が常に順風満帆というわけではない。2例目になるはずのインドでは、様相が明らかに異なる。

「とにかく約束を守らない。約束してもすぐにひっくり返す」

今年7月15日、経済産業副大臣と法務大臣を務めた元衆議院議員の牧原秀樹氏は、Xで怒りをあらわにした。批判の矛先は、日本が資金と技術を注ぐインドの高速鉄道プロジェクトの遅延に向く。

牧原氏は、「インドでの新幹線計画は、私も関わったことがあるのですが、国際会議や交渉の場で繰り返されるインド人の無茶苦茶ぶりが際立っていました」とも記した。

ブルームバーグは経緯を振り返っている。2015年の日印協定により、インドの金融の中心地ムンバイと、ナレンドラ・モディ首相の地元グジャラート州のアーメダバードを結ぶ、全長508キロメートルの区間の建設が決まった。

当初の想定費用は9763億ルピー(約1兆5800億円)で、ブルームバーグによると81%は日本の融資で賄う計画だ。開通予定は2015年の協定締結から7年後とされたが、用地取得の遅れなどが重なった。インド政府は現在、先行区間を2027年に開通させるとしている。

「この件が進まないのは100%インド側のせいだと感じていることを頑張った全ての日本人関係者の名誉のため申し上げます」と牧原氏は綴っている。

一方、インド鉄道省の報道官はブルームバーグに、日本側との協議は「順調に進んでいる」と説明している。「日本は2030年代前半にE10系車両を提供する。車両はまだ開発中だ」とも述べ、工事は急速に進んでいるとした。