日印の覚書は形骸化しつつある
E10系の開発が続くなか、実際に動いている日本の関与は、ほぼ無利息に近い年利0.1%で貸し付ける円借款が中心だ。
インド政府に近い筋の話として、車両も信号システムも日本からは調達されないと、鉄道業界専門誌のインターナショナル・レイルウェイ・ジャーナルは伝えている。
日本からはこのほか、点検・試験用としてE3系とE5系の中古車両各1編成が無償提供されると同誌は伝えるが、仮に投入されたとしても2027年に予定されるスーラト―ビリモラ間の試運転での使用にとどまり、営業運転に日本製が採用される公算は小さい。
理由は価格と納期だ。8両編成が49本必要となるが、日本側の提示額は2000億ルピー(約3240億円)。インドは欧米メーカーからおよそ半額で車両を調達する選択肢を検討してきた、と同誌は伝える。同誌によれば、日本は2034年より前にはE10系を供給できないとの見通しを示しており、早期開通を目指すインドにとって、納期は価格と並ぶ懸念材料となっている。
一方、インド国内では政府系企業のBEMLが、最高時速250キロの8両編成試作車2本を、インテグラル・コーチ・ファクトリー(ICF)と共同で製造中だ。さらに、16編成の追加発注も伝えられている。信号システムには欧州の標準規格ETCSレベル2が暫定システムとして採用され、ドイツ・シーメンスとインド・DRAアガルワルの企業連合が2025年初頭に414億ルピー(約670億円)で受注している。
同誌によれば2015年の覚書では、車両、信号システム、運行管理センターの3分野を日本が担うと定められていた。その覚書は、こうして静かに形骸化しつつある。
騒音3デシベル減、13トンの軽量化
日本の新幹線技術から距離を置きつつあるインドとは対照的に、台湾では日本製の新型車両に注目が集まっている。
2026年4月30日、台湾高速鉄道は第1編成の引き渡しを100日後に控え、N700STを公開した。ホワイトを基調とした先頭部には、明るい未来を象徴する台湾高速鉄道のコーポレートカラーであるオレンジと、現行の700Tから受け継いだ黒のラインが組み合わされている。
台湾高速鉄道の史哲会長はFacebookへの投稿で、新型車両の外観をカモノハシに例えた。愛らしいこの鼻先には、空力特性を高める実用上の効果がある。台湾の英語ニュースサイトの台湾英文新聞は、先端形状の見直しによって騒音が3デシベル下がり、振動も抑えられたと報じている。
史会長によれば、空力性能の向上が特にはっきり表れるのはトンネルに進入する瞬間だという。軽量化も進み、車両重量は従来の700T型より13トン軽くなった。
製造は、日立と東芝が率いるコンソーシアムが担う。12編成の総額は258億台湾ドル(約1260億円)にのぼり、車両は2026年8月から2028年末にかけて順次台湾へ運ばれる。
全編成が出そろい運行本数を増やすことで、ピーク時の輸送能力は25%高まる見込みだ。

