流行を追う人には、流行はつくれない

そんな、独自の「川邊史観」でつづるインターネット産業の30年史。それを一言で象徴するキーワードがある――「いかがわしい」だ。

社会を根底から変えるような技術は、登場した瞬間には理解されません。理解されないどころか、既存の秩序を乱す「いかがわしい」ものとして、普通の人たちから嫌悪され、嘲笑され、ときには石礫を投げつけられる。その宿命からは逃れられません。

換言すれば、起業家とはこの社会的な摩擦に耐え、それでも前へ進む「いかがわしい」者のことを指します。(同書「第7章 起業」より)

インターネット自体が「いかがわしい」技術なら、それに群がったのもまた「いかがわしい」若者だった。だが、そのマグマのような熱狂こそがソフトバンクを生み、楽天を生み、サイバーエージェントを生んだのだ。

「いろんな仕事をして、いろんな人を見てきた経験から、確信をもって言えることがあります。『流行を追う人には、流行はつくれない』。『大丈夫か?』と周囲から心配されたり、眉をひそめられたりする人が、次の流行をつくるんです」

川邊氏は「いかがわしい者」こそが次の流行をつくるという
撮影=遠藤素子
川邊氏は「いかがわしい者」こそが次の流行をつくるという

批判されるたびに「よし!」と思った

川邊氏には原体験がある。同氏が学生起業した「電脳隊」は、いち早くモバイル時代を見越したインターネットサービスを展開していた。当時の電脳隊のサイトでは、携帯電話上で生活に必要なあらゆるアプリケーションを組み込む「Smart Phone」の概念をすでに提唱していた。

「その当時は『こんな小さな画面でインターネットなんて誰がやるの?』と取引先から散々言われていました。でも、そのたびに心の中では『よし!』と拳を握っていましたよ。『この人たちが決裁権を握っているかぎり、モバイルインターネットには参入してこないだろう』って」

既得権者の嘲笑が、インターネット産業における“参入障壁”となるのだ。その後、1999年には「iモード」が登場し、「携帯でインターネット」が当たり前の世の中になった。そして今日、ほぼすべての人の手にはスマートフォンがある。

いつの時代も、「いかがわしい者」こそが次の流行をつくる。その普遍的な真理を、本書は私たちに再認識させてくれる。