大企業トップから「1人起業」のワケ
インターネットビジネスにおける必勝パターンは、これからのAI時代には通用しない。その歴史の「韻」を長期的視点で読み解いた川邊氏だからこそ、本書の「おわりに」では読者にこう問いかける。
ここまでの話は、いったんきれいさっぱり忘れてください!
(中略)感想だけ胸にしまって、そのほかの情報は、即刻アンインストールしてください。(同書「おわりに」より)
読後感に浸っている読者にとっては「ちゃぶ台返し」のような衝撃的な一言だ。が、ただ読者を突き放すだけではない。
というのも川邊氏自身が、これまでの成功体験を捨てる「アンラーニング(学習棄却)」をいち早く実践しているのだ。LINEヤフー会長職を辞してすぐ「AIソロプレナー」を名乗り、文字どおり「AIオールイン」に振り切っている。
新たに設立した会社の社員は、本人ただ一人。都内の築50年の1DKマンションにこもり、ひたすらAIと向き合う日々を過ごす。
「この驚きと興奮は、まさにインターネット以来」
「『新しいぶどう酒は新しい革袋に入れるものだ』という聖書の言葉がありますが、まさにそれです。もうできあがってる人間や組織に対して『AIを入れ込む』のは本当に難しい」
まさに、自らを「新しい革袋」に新調し、新たな酒を醸し始めた川邊氏。その決意は、すでに『7つの激変』でも語られている。
キャリアの大部分を過ごしてきた愛着のあるLINEヤフーを離れ、肩書を捨て、もう一度自分を身軽な個人に「初期化」します。過去の実績も成功体験も捨て去り、それこそ転生するくらいの勢いで、AIという荒野に裸一貫で飛び込みます。(同書「おわりに」より)
約3万人の大企業の会長が、一夜にして1人の「ソロプレナー」に。インターネットビジネスの最前線での戦いを終えてなお、裸一貫でAI時代に挑む、川邊氏を掻き立てるものは何なのか。
「それは、おもしろいからですよ。単純におもしろいから。それだけです」
こちらが拍子抜けするほど、川邊氏はあっけらかんと答える。そして、こう付け加える。
「この驚きと興奮は、まさにインターネットが出てきたとき以来なんですよね……」


