世界では、いまこの瞬間にもさまざまな人権侵害が行われている。それらを監視・調査して、人権擁護の活動を行うNGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の東京事務所代表を務めているのが土井香苗弁護士だ。土井氏は、東大法学部3年生のときに司法試験に合格して、ニューヨーク大学で修士号を取った才媛。なぜ、あまり儲からないといわれる“人権”の世界に飛び込んだのか。田原氏が本音に切り込む!
アフガン難民問題に取り組む
【田原】帰国後は、どうされたのですか。
【土井】結局、弁護士になりました。日本の法律文献を集めるためにエリトリアから一時帰国したとき、いろんな人権派の弁護士の方々にご協力いただきました。弁護士というとエリートやお金持ちのイメージがあったのですが、実際に会って話を聞いてみると、困っている人たちのために骨身を削って仕事をしている方ばかり。司法試験は親に言われて受けただけでしたが、やっぱり私もああなりたいと思ったのです。
【田原】土井さんが手がけた事件として有名なのは、アフガン難民問題です。どういう事件だったのか、説明していただけますか。
【土井】9.11の直後に、世界中のアフガン難民が、タリバン政権やアルカイダとの関係を疑われて捕まりました。日本も例外ではなく、私たちが把握しているだけでも数十人の人が一斉に捕まって、尋問を受けました。
【田原】何の容疑で?
【土井】テロに関係した容疑なんてないから、難民申請中の人たちをオーバーステイという名目で捕まえたのです。捕まった人の多くはハザラ人という少数民族。彼らはタリバン政権から逃れるために難民申請したのに、難民申請したがために国に所在をつかまれて逮捕されたのです。