【田原】でも、エジプトのように新しい大統領が国民を苦しめる場合もある。これはどうすればいい?

【土井】私たちに党派性はありません。誰であろうと平和的な手段で自分たちの意見を言っている限りは、それを弾圧してはダメ、という立場です。大統領派であるモルシ派でも反大統領派でも、人権侵害があれば調査したうえで止めるよう圧力をかけています。

【田原】いまとなると、最初に追放された大統領の頃が1番穏やかだったかも。

【土井】そうですね。ただ、ムバラク政権が国民を弾圧していたから状況がコントロールされていたという面もあると思います。私個人の見解ですが、日本も明治維新のときには、西南戦争などが起きて混乱しましたよね。最近で言うと、自民党から民主党へと平和的に政権交代しただけでも混乱した。そう考えると、政権交代に混乱はつきもの。もちろんその中で起きる人権侵害については厳しく対処すべきですが、混乱があるからと、もとの弾圧政権を正当なものにすることはできないと思います。

【田原】なるほど。では、もう1つ。シリアやエジプトみたいに内戦状態になると、問題が大きすぎて、もう人権とは別の次元のように見えますが?。

【土井】そんなことないですよ。重大な人権問題が多発している状況です。エジプトはアメリカから軍事支援を受けています。だから、エジプトで軍が出動して平和的なデモを鎮圧しようとすれば、アメリカ政府に働きかけて圧力をかけてもらうこともできます。実態を調査して把握しながら、働きかけをするのが、私たちの主な仕事です。

【田原】本当にそんなことができるの?

【土井】「アラブの春」のときエジプト軍が一般市民に発砲するのを思いとどまったのは、HRWの情報やアメリカ政府への働きかけも大きかった。ケリー国務長官の副長官の1人は、2カ月前までHRWのワシントンのディレクターだった人物です。そういう人が政権入りしていることも影響力の源です。