ADHDやASDといった発達特性を持つ人の中には「必要以上に落ち込みやすい」人も少なくない。自身も発達特性を持ちつつナレーター、声優として活躍する中村郁さんは「私たちはさまざまなミスやトラブルで落ち込みすぎたり、心無い人の言葉に傷ついたりする場面が多い。そんなときに心を守り、うまく乗り越えるための工夫が必要だ」という――。

※本稿は、中村郁著『発達障害・グレーゾーンかもしれない人の仕事術』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

屋外の階段に座り込んでいる悩まし気な男性
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人生にトラブルはつきものだと心得る

私は凪いだ海のような穏やかな毎日を過ごしたいと思っています。しかし、次から次へとさまざまなトラブルを自ら起こしたり、引き寄せたりしてしまいます。これまでさまざまなミスを繰り返してきましたが、一番ショックだったのは、センター試験の現代文でマークシートをすべて1つずつずらして塗りつぶしてしまったことです。

うっかりミスはたくさんありましたが、これは翌日まで寝込むほど落ち込みました。しかし、私は翌日の夜、悔し涙を流しながらこう呟きました。

「このパターンな!」

私はわかっていたよ、我が人生にこんなパターンもあることを。つまりセンター試験を捨てろということだ。よっしゃ、捨ててやろうじゃないか。真夜中に自分にこう言い聞かせ、私は私大の試験へ頭を切り替え、精神を集中させたのでした。

「このパターンな!」。

1つずれマーク事件で、うら若き高校生の私が身に付けた言葉です。若き時代に身に付けたこの術で、私は今もさまざまな場面を乗りきっています。

昨年、私はスピーチコンテストに出場しました。一次予選はZoom審査。しっかりと練習し、スピーチに臨みましたが、開始直後、突然Zoom画面が真っ暗。私は恐ろしいほどの機械音痴なので、こうなるともうお手上げです。はたして、相手に私が見えているのか、それすらわかりません。