アメリカ政府に働きかけて圧力をかける

2005年、ニューヨーク大学ロースクールで国際法の修士号、ニューヨーク州の弁護士資格も取得。

【田原】土井さんはその後ニューヨーク大学へ留学します。これはどうして?

【土井】エリトリアはきちんとした英語でなくてもよかったので、1度は米英に留学してみたかったというのが第一です。またアフガン難民裁判を通して、国際人権をきちんと勉強したいという思いもありました。国際人権法の最先端というと、やはり欧米ですから。

【田原】留学中に土井さんはヒューマン・ライツ・ウォッチ(以下HRW)と出合ったそうですね。

【土井】HRWの存在は、日本にいるときから知っていました。HRWはさまざまな調査研究の報告書を年間150冊くらい出していて、アフガン難民裁判のときも参考にしていました。ただ、私は調査研究よりもアクティビズム(政治的な行動)が好きで、HRWには興味がありませんでした。見方が変わったのは、ニューヨークに行ってから。本部では、調査研究だけでなく、問題を解決するための活動も積極的に行っていた。それでこの団体に入ろうと、あの手この手でアプローチしました。

2009年、HRWの東京事務所代表に。

【田原】そこで実績を積んで、いまは東京の事務所の代表になった。いま、どのような活動をしているのですか。

【土井】日本の人権外交を変える活動をしています。日本は潜在的な外交力を持っているのに、とくに人権はほとんど何も主張していません。そこを変えてほしいと政府に働きかけています。

【田原】具体的に聞きたい。2年ほど前に「アラブの春」があって、エジプトでは大統領が追放されましたね。ところが新しい大統領も1年でやっつけられちゃった。あるいはシリアでも、アサド側と反体制側の内戦になって、どっちも人権侵害している。こういう場合、HRWはどう対応するのですか?

【土井】2つの側面があると思います。反体制の運動が起きるのは、そのときの政権が人権侵害を行っていたからだという場合が多いですよね。だからまずはその人権侵害を止める必要があるし、平和的なデモで立ち上がった人たちは守らなくてはいけません。