【田原】HRWは、世界中にあるわけですよね。たとえばロシアはどうですか。

【土井】ロシアでも30年前から活動しています。ただ、HRWのオフィスが政府の攻撃の対象になっていて、脅迫も受けているそうです。あとは中国もオフィスを開設できず、ウェブサイトがロックされています。香港から監視活動をしている状態ですね。

【田原】肝心の日本はどうですか。土井さんが働きかけて、政府は動く?

【土井】日本はさまざまな国に経済支援をしているので、たとえば、「自国民を殺すような政府にはODAは出せない」と言えばいいんです。これは非常に大きな圧力になる。でも、最大4万人の市民が殺されたというスリランカの虐殺において、国際調査さえ求めないなど、いまはそこまでいっていません。安倍首相は、人権が外交の柱と宣言しましたので、期待しています。

【田原】これからが土井さんの腕の見せどころですね。頑張ってください。

田原総一朗が見た土井香苗の素顔

土井さんはすごく頭のいい人だ。大学3年生のときに一発で司法試験に合格している。さらに頭がいいだけでなく、行動力もある。弁護士になる前、独立したばかりのアフリカのエリトリアに乗り込んで司法ボランティアをしたというエピソードには驚かされた。

頭のよさと行動力を兼ね備えた土井さんは、いまHRWで活動をしている。エジプトやシリアでは混乱が続き、さまざまな形で人権侵害が進行中だ。中東だけではない。すぐ隣の中国でも人権侵害は起きている。これらを監視して、各国政府に働きかけるHRWの活動は本当に重要だ。ただ、問題が大きいだけに解決には困難も伴う。土井さんが壁をどうやって突破していくのか。大いに注目している。

土井香苗
1975年、神奈川県横浜市生まれ。私立桜蔭中学、桜蔭高校卒。東京大学法学部3年時に司法試験に合格。ピースボートの世界一周クルーズに参加し、エリトリアの状況を知り、その後、エリトリアに渡る。2000年弁護士登録。05年ニューヨーク州弁護士資格取得。06年ヒューマン・ライツ・ウォッチに参加。09年から現職。
田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経てフリーに。活字と放送の両メディアで評論活動を続けている。『塀の上を走れ』『人を惹きつける新しいリーダーの条件』など著書多数。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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