インターネット(以下、ネット)が普及したことによって、私たちの生活は便利になった。ただ、ネットが社会にもたらす変革はそれだけなのだろうか。ソーシャルメディアを駆使するジャーナリスト津田大介氏と、20代にして華々しく論壇にデビューした古市憲寿氏。田原氏が注目する若手論客2人に、ネット時代の企業論や働き方について語ってもらった。

攻めとしての無料化とは

(右)津田大介氏(左)古市憲寿氏

【田原】今日はネットが世の中をどう変えるのかというテーマでいろいろ教えてもらいたい。最近、ヤフーがオークションやショッピングの手数料をゼロにすると発表しましたね。この狙いは何だろう?

【津田】1番は、個人間取引の“標準”を再び、取りにいくことじゃないでしょうか。ヤフーのオークション(以下、ヤフオク)は個人間取引の分野で独走していましたが、最近、LINEが個人間取引のサービスを提供するようになりました。LINEは無料なので、ヤフオクはユーザー離れが起きかねない。そこでまだユーザーを囲い込めているうちにLINE対抗策として無料化に踏み切った。一方、ヤフーショッピングの無料化は、楽天やアマゾンへの対抗策だと考えられます。ヤフオクはトップの座を守るための無料化でしたが、ヤフーショッピングは、楽天やアマゾンに勝てていない。攻めとしての無料化ですね。

【田原】堀江貴文さんは、ヤフーの狙いはヤフーポイントを円に対抗する通貨にすることだといっていた。これは、どういう意味ですか?

【津田】ヤフーには決済機能があり、その中でヤフーポイントは通貨の代わりになります。ヤフーが無料化でユーザーを囲い込む背景には、個人間決済のインフラとして、いずれは銀行の代わりになりたいという思惑があるのかもしれません。

【田原】佐々木俊尚さんの『レイヤー化する世界-テクノロジーとの共犯関係が始まる』という本を読んだら、ネット時代は個人決済が多くなり、今に銀行がいらなくなると書いてあった。これは、どうですか。

【古市】最終的な決済の場として銀行は残ると思いますよ。ネット銀行は増えるかもしれませんが、それでもヤフーや楽天のサービスをたくさん使ってポイントに依存している人と、まったく依存していない人に二極化しています。田原さんは、ヤフオクを使ったことはありますか?