「見えない大陸」でのビジネスとは
日本のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の先駆けになったソーシャルメディア大手のミクシィが4~6月期に上場以来初の赤字を計上し、2014年3月期の連結最終損益が26億円の赤字になると発表した。
ミクシィと同じく04年にサービスを開始したソーシャルゲーム大手のグリー(GREE)も直近四半期の連結決算で上場以来初の赤字に転落、すでに国内外の事業所を閉鎖し、希望退職者を募集するなどのリストラ策に着手している。かつてネットで隆盛を誇ったSNS企業が揃って凋落した理由として、「スマートフォン(スマホ)対応の遅れ」と解説している新聞メディアが多い。しかし、スマホへの対応が最も早かったブラックベリーにしても衰退ぶりは顕著なわけで、「スマホ対応の遅れ」は“後付け”の理由でしかないと私は思う。
ネット企業の栄枯盛衰を分かつものは何か。それは見えないものを見る力、言い換えれば「先見力」にある。今から10年以上前に『The Invisible Continent(見えない大陸)』(邦題『新・資本論』)という本で、旧来の経済社会を侵食して広がっていく“見えない経済大陸”の存在について初めて記した。
この新大陸は「実体経済」「ボーダレス経済」「サイバー経済」「マルチプル(倍率)経済」という4つの経済空間で構成され、それらが相互に作用しながら渾然一体となっているのが特徴だ。そこではこれまでの経済原則や企業戦略がまったく通用しない事象が次々と起こる。しかも厄介なことに、この新大陸は文字通り、目に見えないし、手で触れて確認することもできないから、「見えない大陸」の存在を認識することすら難しい。つまり「見えない大陸」が“見える人”と“見えない人”がいるのである。
前述の「見えないものを見る力」とは、まさに「見えない経済大陸を見る力」にほかならない。
「見えない大陸」でのビジネスは、ワイルド・ウェストと呼ばれたアメリカの西部開拓時代のようなものだ。見えない人は自分が広大な未開の地に立っていることにさえ気づかないが、見える人はそこに杭を打ち込み、ロープや柵で囲い込む。「これはオレの土地だ」と主張すれば、それがそのまま自分のテリトリーになり、時にはテリトリーを巡ってライバルと撃ち合いになることもある。
今やテレビ、PC、スマホなどあらゆるデジタル製品がユビキタスにネット上でつながって、20世紀には存在しなかったデジタル新大陸が出現している。これも「見えない大陸」の一断面で、デジタル新大陸がどういうものか、具体的に見えていた人は数年前から着々と布石を打ってきた。今になって途方に暮れているのはそれが見えなかった人たちなのだ。