インターネット(以下、ネット)が普及したことによって、私たちの生活は便利になった。ただ、ネットが社会にもたらす変革はそれだけなのだろうか。ソーシャルメディアを駆使するジャーナリスト津田大介氏と、20代にして華々しく論壇にデビューした古市憲寿氏。田原氏が注目する若手論客2人に、ネット時代の企業論や働き方について語ってもらった。

緩やかにしか変化しない日本

津田大介氏

【田原】ネット時代、新聞、雑誌などの紙媒体はどうなる?

【津田】ストックの情報なのか、フローの情報なのかで変わると思います。本は1つのテーマでまとめられていて保存性もいい。そういうストックな情報は紙で残るけど、1回読んで終わりのフローな情報は電子のほうが便利です。だから新聞や雑誌は厳しいと思う。

【田原】そのわりに新聞は電子化があまり進んでないように見える。

【津田】日本は既存のものを守ろうとするので、ラディカルには変わらない。たとえばアメリカにおいて、CDの販売は、ずっと販売店経由でした。でも、デジタルの時代になって一気にCDが消えて、音楽をネット経由のデータで買うようになった。一方、日本はCDの流通の仕組みを守りながらデジタル時代に対応しようとする。だから、CDの売り上げは落ちているものの、減り方が緩やかで、ここ数年、アメリカを抜いてCDの売り上げが世界1位になっちゃった。おそらく新聞も同じです。宅配する販売店を守りながらやろうとしているので、緩やかにしか電子化していかないと思います。

【古市】僕も日本がドラスティックに変わるとは思わないですね。先ほどヤフーポイントが円の代わりになるという話が出ましたが、ネットの普及によって国民国家の役割が相対的に弱くなっていくという話だと思うんです。ただ、そうはいうものの、僕たちの生活が激変するとは思えません。国民国家は明治から始まりましたが、その前からお伊勢参りと参勤交代のために道路が張り巡らされていて、人々は全国を自由に行き来していた。江戸時代と明治時代で、人々の生活にそこまで変化はなかったという研究者もいます。そう考えると、ネット時代になり国民国家が弱くなっても、ビジネスも含めて極端に変わらないんじゃないかと。