【津田】家賃も東京ではなく埼玉や千葉で、駅から徒歩15分だと、かなり安い家賃で住めます。そこにネットがあれば、健康で文化的な生活は十分に送れます。

【古市】今やネットも福祉の1つです。LINEやフェイスブックのおかげで、友達とすごく安くやりとりできるようになった。これも健康で文化的な生活に貢献していると思います。

【田原】日本版ワークシェアリングはおもしろいな。ただ、休みの日だけのバイトが都合よく見つかるかな。

【津田】アメリカでは今、労働力のヤフオクみたいなサービスが流行っています。たとえば「あなたは5時間余っていませんか、その5時間で商品のレビューを投稿してください。報酬は5ドルです」というように、単純作業のバイトをマッチングするサイトもある。そのうち日本でも、似たようなサービスが出るんじゃないですか。

【田原】そのサービスもいいね。ネットの可能性を感じる。いろんなおもしろい話を聞けた。ありがとうございました。

田原総一朗が見た津田・古市の素顔

正直いって、僕はネットのことがよくわかっていない。ただ、自分ではそれほど熱心に利用していなくても、ネットが社会にもたらす変化については非常に興味がある。最近読んだ佐々木さんの本には、大企業がなくなるかもしれないと書いていた。本当にネットによって世の中はひっくり返るのか。今回は津田さんと古市さんの2人に、そのあたりのことを教えてもらった。興味深かったのは、2人とも、ネット社会になったからといって日本はドラスティックに変わらないと考えていた点だ。若い世代からも、日本は保守的で、簡単に変わらない国だと見えるのだろう。津田さんが提案した日本版ワークシェアリングもおもしろかった。週休3日にしてみんなの雇用を守りつつ、休みの間に好きなことを仕事にできる環境が整えば、会社員ももっといきいきと働けるようになるはず。この話も含め、今回はいろいろと勉強になった。

津田大介
1973年、東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒。学生時代からIT関連のライターとして活躍。99年有限会社ネオローグを設立し、代表取締役。メディア、大学で幅広い活動を展開中。
古市憲寿
1985年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。現在、東京大学大学院総合文化研究科博士課程に在籍中。大学在学中に、ノルウェーのオスロ大学に交換留学で学んだこともある。
田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経てフリーに。活字と放送の両メディアで評論活動を続けている。『塀の上を走れ』『人を惹きつける新しいリーダーの条件』など著書多数。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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