1991年に旧ソ連から独立して以来、電子国家として世界に名を轟かせるエストニア。そのデジタル化を加速させたのが、エストニア版マイナンバー制度である「e-ID」だ。このデジタルIDによって変わったエストニア人の暮らしぶりから、日本のマイナンバーの可能性を探る——。
写真=Toolbox Estonia

あなたであることを証明するデジタルID

想像してみてほしい。あなたと同じ名前の方は日本に何人いるだろうか。

たとえば筆者と同じ名字である「サイトウ」さん。小学校の時点で同級生には3人のサイトウさんがいたし、全国を見渡すと数十万という単位でいるという。ではそんな多くのサイトウさん一人ひとりをどうやって明確に区別するのだろうか。

下の名前と組み合わせたとしても、重複する可能性は十分にあるし、万が一同姓同名の人と間違えられてサービスを受けてしまったら——たとえばそれが病院で血液型を間違われたらと考えると血の気が引いてしまう。

ましてやサービスの舞台がアナログからデジタルに移り変わる今、デジタル世界では名前での呼び出しもなければ、診察券も発行してもらえない。「デジタルID」とは、そうしたデジタル世界において、確実に本人を識別できる身分証明書である。

デジタルIDは主に政府によって発行され、国民一人ひとりに振り分けられる。誰しもが共通の規格で独自のIDを持つことになるため、誰とも重複することがなく、行政や民間サービスを利用する際の識別子として活用可能だ。