利便性の高いサービスから正のサイクルが起こる
エストニアでは民間企業に浸透したことが、デジタルIDの普及に大きく寄与した。日本においても、デジタルIDと連携した利便性の高いサービスが増えれば、デジタルID(マイナンバーカード)の利用者は徐々に増えるだろう。
「利用者」が増えれば、さらにその利用者をターゲットにした「利便性の高いサービス」が増える。そして、「利便性の高いサービス」が増えれば、「利用者」、つまりマイナンバーカード保有者も増える、と正のサイクルが起こりうるのだ。
少なくとも、筆者はエストニアに拠点を置いている一人の人間として利便性を大きく享受している。各種の行政手続きや電子署名は、世界中どこにいても行うことができるし、財布は小ぶりなカードケースのみになった。パスワードをサービスごとに覚えなくても良いから管理の負担も減少するし、そういった意味ではすでに「デジタルIDなしの生活」が想像ができない。
とはいえ、人口規模が100倍も違う日本とエストニアでは、事例を単純に比較して、そのままコピーすることは難しい。次回以降は、デジタルIDのさらなる発展型や、日本の課題と絡めたデジタルIDの活用想定事例を紹介していく。(続く)