炎上する記者会見にはどんな特徴があるか。企業の危機管理対応に詳しい西尾晋さんは「炎上する記者会見を行った企業は、『説明責任・透明性・情報開示』といった危機管理のキーワードを理解していない。2025年でいえばフジテレビと広陵高校の記者会見はこれらの観点からすると問題があるが、さらに問題の大きい記者会見があった」という。(聞き手、構成=ライター・徳重龍徳、後編/全2回)
そもそも記者会見は“負け戦”
危機管理広報の専門家として、これまで数多くの企業の不祥事対応や記者会見の支援を行ってきました。本稿では、2025年に世間を騒がせた謝罪会見や危機対応について振り返り、特に対応が悪かったといえる「ワースト3」について解説していきます。
まず、「ワースト3」の解説に入る前に「何をもって良い会見とするか」という基準について説明しましょう。私がコンサルティングの現場で必ず提示している基準があります。危機管理広報、すなわちクライシスコミュニケーションには3つのキーワードがあります。
記者会見ではこの3つに加えて、会見で何を訴えるのかという「キーメッセージ」、会見で示される運営も含めた「企業姿勢」の5つのポイントが大事になります。
そもそも、不祥事や問題が起きたとしても、適切な対応を取れば記者会見を開かずとも済むケースがあります。ですので、私からすれば記者会見は始まった時点で「負け戦」です。すでに不祥事や問題が起きているわけですから、そうした場で勝とうとしてはいけません。メディアからの厳しい質問を受けるなかで、いかにダメージを最小限に抑え、信頼回復へどう繋げるか。それが記者会見の目的なのです。
記者は、登壇者が言い訳をしたり、敵対的な態度を取ったりすれば「こいつは反省していない」「わかっていない」とさらに厳しい質問を浴びせてきます。逆に、たどたどしくても真摯に謝罪し、情報を包み隠さず出す姿勢が見えれば、それ以上攻撃することは難しくなります。

