不祥事を起こした企業や人は、どのような対応を取るべきか。企業の危機管理対応に詳しい西尾晋さんは「“良い記者会見”をしてもリスクをコントロールできるとは限らない。静岡県・伊東市の田久保前市長はほぼ隙のない辞任会見を行ったが、それまでの対応に問題があったため、信頼を回復できずに市長選でも落選してしまった」という。(聞き手、構成=ライター・徳重龍徳、前編/全2回)
レコーダーを手にした記者たちに囲まれているスーツ姿の男性
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目指すべきは「良い記者会見」ではない

危機管理の専門家としてさまざまな方とお話をしていると、本稿のテーマのように「良い記者会見とはなにか」という質問を受けることが少なくありません。

たしかに不祥事を起こした企業にとって「良い記者会見」をすることは重要なことです。ですが、危機管理の本質は「記者会見を炎上させないこと」ではありません。専門家からすれば記者会見は「負け戦」です。

これは当然のことではありますが、「良い記者会見」をすることよりも、記者会見をせずに済むことのほうが企業にとってはダメージが少なく済みます。なので、専門家がまず目指すのは「良い記者会見を開くこと」ではなく「記者会見を開かずに問題を解決すること」なのです。

また、被害者がいる事案であれば、被害者対応を最優先する必要があります。事案によっては行政への対応も必要です。

「行政に報告すれば、メディアに流れてしまう」と警戒感を持つ企業の方もいますが、実際はそんな簡単には流れません。逆に事案を隠さず誠実に対応すれば、たとえ法令違反が含まれるような事案であっても記者会見を行わずにダメージを最小限に抑えられるケースも多々あります。

最優先すべきなのは、メディアへの対応ではなく被害者対応や行政対応なのです。