憲政史上初の女性首相となった高市政権はどのような現状か。実業家のひろゆきさんは「高市財政は、いわばアクセルを踏まずにスピードを上げようとしていて物理的に持続不可能だ」という――。

景気対策のロジックが無理筋

結論から言いましょう。

高市政権は、構造的に長持ちしません。

高市政権の現状をまとめると、「財政は慎重に」「でも景気は良くしたい」「株価は下げたくない」「インフレは困る」「給付は控える」「でも賃金は上げたい」という、ほぼ詰め将棋の盤面みたいな状態です。

しかも感情論と期待値だけで走り始めた政権は、だいたい短命です。数字と構造が味方しない時点で、ほぼ詰んでしまうからです。現政権を好むか好まざるかではなく、構造的に自明なハナシです。

どんな構造か。はっきり言ってもよければ、高市政権は、最初から景気対策のロジックが無理筋です。

「物価高を推し進めて景気が良くなったように見せるやり方」が、高市財政の方向です。大企業の売上が増える。利益が増える。その利益で賃上げする。「物価は高いけれど、賃金も高いので景気は回復しました」という形に見せる。

言ってみれば“インフレ頼みの景気回復”です。物価を無理やり押し上げて、あとから賃金が追いつくと“期待する”方法。で、“物価だけ先に上がる”と国民が怒るので、怒りを抑えるために初めはバラまく。これは最初から決められている筋です。

春闘で5%の賃上げが確定したら、バラまきは終了。だから電気ガスの補助金も来年は不透明です。2026年1〜3月に補助再開の方針が示されても、その「規模・対象・延長可否」は正式決定されていない。いわば物価急上昇の“痛み止め”的な手段なので、効いたら捨てる。そんな扱いです。

ただし、ここまでは構造としては理解できます。でも問題は、その先です。

笑顔を見せる高市首相 流行語大賞は「働いて……」
写真=共同通信社
「新語・流行語大賞」の年間大賞に「働いて働いて働いて働いて働いてまいります/女性首相」が選ばれ、表彰式で笑顔を見せる高市首相=2025年12月1日午後、東京都千代田区

株価市場は期待で動き、期待で崩れる

世界のどの国も「物価が先、賃金は後」という順序では成功していません。賃金が追いつかなければ、単なる「生活苦」です。物価だけ上がって生活が苦しくなった国は、全部沈みました。

それでも高市政権は「まず物価、賃金はその後で」と言い続けています。ですが、日本の企業も労働市場も、そんなふうに都合よく賃金が上がる構造ではありません。毎年5%の賃上げが当たり前の国じゃないのは誰もが知る通りです。

僕に言わせれば、最初に置かれた“景気回復ストーリー”自体が無理筋なんです。その無理筋のために、国民の“物価高耐久暮らし”が試されている状態です。

株価の話に移りましょう。

高市政権になって株価が上がった、という報道が続きました。例えば12月9日時点の日経平均は、約5万670円。バブル期の最高値を超えた「史上最高圏」です。

でも、それは政権の実績ではありません。期待です。「らしい」の積み上げです。政策の結果ではなく政策への期待であり、期待で動く市場は、期待で崩れます。これは昔から変わりません。