手取りは物価に負けている

つまり、実体経済は改善されていません。

2025年10月の名目賃金は+2.6%。一見すると上がっていますが、同じ月の物価(CPI)は+3.0%。結果、実質賃金は10カ月連続マイナスです。要するに、給料は増えているように見えて、じつは物価に負けている。手取りの実感はむしろ減っています。

企業の生産性も上がっていません。技術革新も停滞しています。若い労働力は減っています。投資余力も乏しい。世界市場での日本企業の存在感も薄れています。

株価だけが上がっていて、実態が付いてこない。いわば完全に、“雰囲気の相場”です。雰囲気で上がった数字は、雰囲気で下がります。温度で膨らんだ風船と同じで、冷えた瞬間にしぼむだけです。

経済を良くするには、政府が財政出動をする必要があります。企業が投資に消極的な国では、政府が先に動くしかありません。ところが高市政権は「一律現金給付はナシ」「消費減税もナシ」。でも、「財政は健全化」と言い続けている。これだとアクセルを踏まずにスピードを上げるようなもので、物理的に不可能です。

日経平均
写真=iStock.com/winhorse
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“3つの消費源”がすべて止まっている現状

経済は、誰かが消費しないと回りません。これは基本です。

じゃあ、誰が消費するのか。

選択肢は、①政府、②企業、③家計(個人)、この3つしかありません。

まず政府ですが、高市政権は「給付はやりません」。つまり、政府が消費(=支出)を増やす気はない。

次に企業。企業がどれだけお金を使っているかを示すのが「設備投資」です。ところが、日本企業の設備投資は2024〜25年にかけて前年比+1〜2%程度の小幅増でインフレ率の3%にすら追い付いていない。実質ではむしろ横ばいかマイナスです。つまり、企業は消費をしていません。

最後に個人。個人消費の約6割を決める実質賃金は、2025年10月まで前年比-0.7%で10カ月連続マイナスです。手取りが減っているので、個人は消費を増やしようがありません。当然、家計は財布を閉じます。

つまり、現状はこう。

①政府は使わない(給付しない)
②企業は使わない(実質投資は伸びていない)
③家計は使えない(実質賃金マイナス)

この“3つの消費源”がすべて止まっています。経済が停滞するのは、むしろ当然です。

それでも高市政権は「バラまきはダメ」の一点張りで、財政を出ししぶる。その結果、政府が用意した“景気対策”は、どれも実態を伴いません。言ってしまえば、全部“絵に描いた餅”です。見た目は立派でも、食べられません。