QR決済の爆発的普及のウラ側

2018年12月4日から開始されたスマートフォン(スマホ)QR決済「PayPay(ペイペイ)」が打ち出した「100億円あげちゃうキャンペーン」は、5万円を上限として利用額の20%がキャッシュバックされた。また、条件を満たせば10分の1の確率で利用額が全額キャッシュバック(上限10万円)されるなど、まさに「大盤振る舞い」と呼ぶべきものだった。

7payのサービス開始をアピールするセブン‐イレブン・ジャパンの永松文彦社長。残念ながら最悪の出だしとなってしまった。(時事通信フォト=写真)

このキャンペーンではわずか10日で予算とされていた100億円が使い切られ、18年12月13日をもって終了した。還元されるのは20%分のため、10日間で500億円がペイペイによって支払われ、ペイペイは約190万人のユーザーを獲得したといわれている。

ペイペイでは、PRにタレントの宮川大輔氏を起用したり、新規登録で電子マネー残高を付与したりと「スマホ決済を使ったことのない人に、まずアプリを触ってもらう」ことに主眼を置いて展開していると思われた。

こうしたユーザーの利便性を追求するあまり、当初ペイペイでは紐付けたクレジットカードの入力に何度失敗しても利用制限がかからない仕様を採用していた。そのため、犯罪者の攻撃ツールとして使われてしまい、大量の不正利用の踏み台となってしまった事実もあるが、このキャンペーンの効果もあり、19年5月29日にリサーチ・アンド・ディベロプメントが発表した「キャッシュレス決済に関する調査」によれば、スマホQRコード決済の登録経験があると回答した人は29.2%にのぼった。

JCBの調査によると、日本人のクレジットカード保有率は84.0%だという。QR決済の先駆者である「Origami Pay」「LINE Payコード決済」のサービス開始が17年だったことを考えると、2年あまりで約3割の普及率は破竹の勢いといってもいいだろう。

QR決済は、導入へのハードルが低いことがメリットとしてあげられる。例えばペイペイのユーザースキャン方式であれば、店舗が用意すべきものはユーザーが読み込むためのQRコードひとつのみ。クレジットカードのように専用の端末を用意する必要がなく、場所もとらない。そのため、これまでクレジットカードの導入に消極的だった中小事業者もQR決済に参入しているという背景がある。

QR決済の普及はめざましいが、あくまでもQR決済は決済手段のひとつであり、それによって消費が爆発的に増えることは考えにくい。同様の決済手段であるクレジットカード業界はQR決済の普及により、苦境に立たされていると考えることもできるが、各種クレジットカードや航空会社のポイントやマイルの交換先を電車の乗り換え案内のように探すことのできるサービス“ポイ探”を運営し、クレジットカードや各種ポイント制度に精通する菊地崇仁氏は、これに対して慎重な見方をしている。