「QRとクレジットカード、2者の単純な対立という観点で見た場合、決済手段が増えることでクレジットカードの取扱高が減ることは考えられますが、経済産業省が発表した日本国内のキャッシュレス決済比率は交通系・流通系電子マネーに多いプリペイド式、デビットカードのようなリアルタイムペイ、そしてクレジットカードのようなポストペイ(後払い)をすべて含めても20%に満たない状況です。日本ではキャッシュレス決済そのものがあまり普及していないため、パイの奪い合いという状況には至らず、決済手段が増えていくことでキャッシュレス決済の市場全体が底上げされ、全体的に利益を享受できる可能性もあります」

日本はかなり現金決済の割合が高い

各国のキャッシュレス決済比率を見ると、韓国が約89%、中国が約60%、アメリカが45%となっており、日本はかなり現金決済の割合が高いことがわかる。8割以上残っている現金決済の市場を塗り替えることができれば、菊地氏の指摘通り市場全体が潤う結果にもなっていきそうだ。

しかし現状では、ペイペイやOrigamiのように、クレジットカードをチャージ元に設定して支払うQR決済もある。この場合、1度の買い物で二回の決済が行われることになる。そのため、現状を正しく把握することは難しい部分もあるのが現実だ。

そして、一部のクレジットカードではnanacoや楽天Edyといった電子マネーチャージ時に、ポイントを付与しないものもある。これはクレジットカード会社が電子マネーを“拒絶”したともとれる。これがQR決済にも普及すれば、二極化は進んでいくとも思われるが、菊地氏は「電子マネーへチャージを行った際、クレジットカード会社へ入る手数料が低いことが原因のひとつ」と語る。

例えばクレジットカードで1万円の決済を行った際、還元率1%のカードであれば100円分のポイントが付与される。手数料の高い加盟店でも、低い加盟店でも付与率は変わらないため、手数料が低い電子マネーチャージでポイントを付与した場合、クレジットカード会社が赤字になる可能性があることが、ポイント付与対象外の原因であり、締め出しではないという見方だ。

しかし、クレジットカード会社も何もせず手をこまねいているわけではない。菊地氏によれば、近年ではプラチナカードの発行が増えているという。

三井住友トラストクラブが発行する「SuMi TRUST CLUBプラチナマスターカード」はその典型だ。年会費は破格の3000円であるにもかかわらず、レストランのコースメニューが1名分無料になるといった特典があるほか、全国の主要空港ラウンジおよび海外2カ所の空港ラウンジが無料となる「空港ラウンジサービス」があるなど、プラチナカードの名に恥じないサービスを持っている。

※編註:初出時、「SuMi TRUST CLUBプラチナマスターカード」にプライオリティパスが無料付帯すると書かれていましたが、間違いでした。訂正します。(2019年7月24日10時45分追記)