いまだに財布を持って外出する日本人
日本は長らく電子マネー後進国と言われてきました。たとえばお隣の中国・上海では、外出する際に財布を持たずに出かけるのが主流です。スマホ決済サービスの「アリペイ(支付宝)」や「ウィーチャットペイ(微信支付)」で、大手小売店から街中の屋台まですべて支払いができるからです。それと比べれば、財布を持って外出する日本はやはり遅れていると言わざるをえません。
ところがここ数カ月、日本でも急速にスマホ決済が浸透しつつあります。ソフトバンクが運営する「ペイペイ」、メルカリが運営する「メルペイ」、LINEが運営する「LINEペイ」など、スマホ決済アプリのダウンロード数と利用できる店舗数が飛躍的に増加しているのです。
ユーザー数が増加した理由は大々的なキャンペーンによるもので、読者の皆さんも何らかのかたちですでに体験済みなのではないでしょうか。今回は私自身も俗に言う“ポイント乞食”になり、どのようなメカニズムでスマホ決済が浸透し始めたのか、そしてこれからどうなるのかを経済評論家の視点も交えて解説してみたいと思います。
ペイペイ「100億円キャンペーン」が反響を呼んだワケ
日本でスマホ決済が一躍有名になったのは、何といっても昨年12月にペイペイが実施した「100億円あげちゃうキャンペーン」でしょう。ペイペイで買い物をすると、利用額の20%が還元されるというキャンペーンです。
還元率に関して言えば、これまでも同様の企画がいくつかありましたが、このキャンペーンはとにかく還元額が大きいのが特徴でした。ほかのサービスでは2000円程度を還元額の上限にしていたのに対して、ペイペイの上限額は5万円。たちまち話題になりキャンペーン開始からわずか10日間で還元額が100億円に達してキャンペーンが終了する結果になりました。
調査会社の推計によると、ペイペイがこのときに獲得した新規ユーザー数は489万人に上ったといいます。これは多くの日本のユーザーにとって、初めてQRコード決済を体験した瞬間だったと言っていいでしょう。
この「ペイペイ騒動」を取材していたところ、もうひとつ、興味深い事実がわかりました。キャンペーンに参加したある大手家電量販店によると、ペイペイの導入を決めたのは、なんとキャンペーンの前日だったというのです。これは、いままでの店舗側の意思決定では考えられないスピード感でした。