POSレジの改修なしに導入できる
ふつう、小売店が新しい電子マネーを導入する際には、ITの改修作業が必要です。POSレジに新しい決済方法のボタンをひとつ加えるために、数千万円のコストと数週間の作業がかかるのが業界の常識でした。ところがペイペイは、「導入しよう」と決めたら翌日から導入できる仕組み完成させ、従来の常識を覆しました。
この手軽さこそが、中国でアリペイのようなQR決済サービスが急速に広まった理由でもあります。最短の場合、小売店は店頭に専用のQRコードを貼るだけで、スマホ決済に対応できるのです。
また、消費者側の決済も非常に手軽です。支払いの際に店員が示すQRコードをスマホで読み込み、自分で金額を入力します。そして店員に決済完了画面を見せれば取引はおしまい。
お店側では、その完了画面に出てきた数字をレジで備考欄に打ち込むこともあるようですが、こうしてPOSレジの改修なしに導入、即稼働できるのは大きなメリットでしょう。
フェーズによって変容するキャンペーンの質
さて、日本におけるQRコード決済サービスの、“その後”を見ていきましょう。年が明けて2019年の2月に、ペイペイは「第2弾100億円キャンペーン」を開始しました。ここでペイペイは、新しい仕掛けを導入します。還元率は20%、還元の上限額は5万円に据え置きながら、1回の決済での還元額は1000円までという新しいルールを設定したのです。
実は先の第1弾キャンペーンでは、私の家族が25万円する高級望遠レンズを購入して、一度の購入で上限の5万円を獲得したことがありました。しかし、今回のキャンペーンではそのような大物買いをしても還元額は1000円どまり。上限の5万円まで還元してもらおうと思えば、最低でも50回、ペイペイで買い物しなければならないわけです。
このルールを見て私の周囲でも「改悪だ!」と怒った人もいましたが、キャンペーンマネジメントの定石としてはとても正しい方法です。なぜなら、第1弾のキャンペーンの目的が新規ユーザーの獲得だったのに対し、第2弾では「ユーザーに利用習慣をつけさせること」が狙いだったからです。
コンビニやドラッグストアなど日常的に訪れる店舗で、ユーザーが「こっちで払ったほうが得なんだ」とペイペイを使う習慣を持つことの方が、このフェーズでは重要なのです。
結果的にこのペイペイの第2弾のキャンペーンは、第1弾ほど話題にはなりませんでしたが、期間的には長く継続することになり利用習慣の定着に一役買いました。第1弾はわずか10日で終了しましたが、第2弾のキャンペーンは2月12日から5月13日まで、ほぼ3カ月間かけて100億円還元がゆっくりと進行したのです。