中東では、ガザ・イスラエル紛争やイランのミサイル発射、シリアのアサド政権の崩壊など不安定な情勢が続いている。ジャーナリストの池上彰さんは「ユダヤ教とキリスト教、イスラム教は同じ神様を信じているため、それぞれにとっての聖地も同じイスラエルのエルサレム旧市街にある。このことが衝突の原因にもなっている」という――。

※本稿は、池上彰『歴史で読み解く!世界情勢のきほん 中東編』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

オリーブ山からのエルサレムの美しい景色
写真=iStock.com/Wirestock
※写真はイメージです

神=ヤハウェ=ゴッド=アッラー

中東を扱うときに必ず登場するキーワードが、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の一神教です。いずれも一神教ということは、この世界をお創りになった唯一絶対の神様を信じているということ。要は同じ神様を信じているのです。

ヘブライ語ではヤハウェ、英語ではゴッド、アラビア語ではアッラーと呼ばれています。それなのに、なぜ対立しているのか。基礎から考えましょう。

まずユダヤ教は、唯一神(ヤハウェ)を信仰し、自分たちだけが神から救われると信じる宗教です。そこでユダヤ人の民族宗教とも呼ばれます。

ユダヤ教徒は、過去にエジプトで奴隷になるなど、数々の悲惨な体験をしてきました。これは、神のいいつけを守らなかったために神の怒りを買ったからだと考えます。過去に試練を受けたのは神への信仰が足りなかったというわけです。

「1週間=7日」の根拠は聖書にある

ユダヤ人たちは、紀元前12世紀頃から「神に与えられた地」とされるカナンに住み着いたと考えられています。彼らは、神がどのように世界を創造したのかなどが書かれたヘブライ語の聖書を信仰しました。

ユダヤ教徒でもキリスト教徒でもない私は、まだ人間が誕生する前のことなのに、どうして聖書に天地創造が書かれているのだと突っ込みを入れたくなりますが、これは霊感を得た人間が、神の教えにもとづいて記述したと考えられているのです。

聖書には神は6日間かけて世界を創り、7日目に休まれたと書いてあります。これが「1週間」の始まりです。私たちは7日間を1週間として生活しています。これはユダヤ教とキリスト教の生活リズムが、明治以降に日本に入ってきたからなのです。