「この岩からムハンマドが天に昇った」
次にイスラム教です。イエスが処刑されてから540年ほど後、アラビア半島のメッカで生まれたムハンマドは「神の声を聞いた」として「神の言葉」を広めます。これが『コーラン』にまとめられました。
さらにムハンマドの言行録が『ハディース(伝承)』としてまとめられます。
この『コーラン』と『ハディース』の中に、ムハンマドがメッカにいたある夜、天使に付き添われ、天馬に乗って「遠くの町」まで行き、そこから天に昇って神や預言者たちに会い、再び地上に戻ってきたという記述があります。この「遠い町」がエルサレムだと考えられるようになりました。
エルサレムの神殿が破壊された後、アブラハムが我が子イサクを横たえたとされる岩は、剥き出しのままになっていました。ムハンマドは、メッカからエルサレムまで空を飛んできて、この岩に降り立ち、ここから天に昇ったと考えられるようになります。
「岩のドーム」がイスラム教徒の聖地に
ユダヤ教の神殿が破壊された後、ユダヤ人たちは追い出され、世界各地に離散。エルサレムにはイスラム教徒たちが住むようになります。イスラム教徒たちは、岩が風雨にさらされて崩れるのを恐れ、岩を覆うドームを建設。692年に完成し、ドームには金箔が貼られました。これが「岩のドーム」です。
ここは聖なる岩を保護する建物であり、祈りの対象ではありません。イスラム教徒たちがメッカの方角に向かって祈りを捧げるモスクは、岩のドームの近くに建設されました。それが「アル・アクサモスク(遠い町のモスク)」です。「遠い町」とはメッカから見たエルサレムの表現です。
その結果、ユダヤ教徒にとって聖なる場所である神殿の丘(神殿の跡)が、イスラム教徒にとっての聖地にもなっているのです。