また、セゾンプラチナ・アメリカン・エキスプレス・カードやタカシマヤプラチナデビットといった、年会費約2万~3万円程度で発行されるプラチナカードもある。中でもタカシマヤプラチナデビットは、「プラチナカードの特典がついたデビットカード」という、珍しい1枚だ。クレジットカードではないため、年会費を払う覚悟さえあれば誰にでも発行される。

こうしたプラチナカードについて菊地氏は「『せっかく年会費を払っているんだから』と、利用者は他のカードや電子マネーで使っていた分をプラチナカードに集中する傾向にある。そのため、プラチナカードの囲い込み効果は抜群です」と語る。

「一部の人にしか手の届かない世界」ではなくなったプラチナカードは、クレジットカード界のシェアを増やす要因になるかもしれない。

3日間の不正利用額は5500万円

また、わが国では歴史の浅いQR決済では不安要素も多く残っている。

前述のペイペイが不正利用された問題のほか、19年7月2日にはセブン&アイ傘下の事業者、セブン・ペイの提供するQR決済「7pay」のアカウントに不正アクセスをした第三者によって無断で、登録していたクレジットカード等からチャージされ、決済が行われたという報告が相次いだ。

7payではパスワードを忘れた場合「生年月日」「電話番号」「メールアドレス」がわかれば、パスワードが再発行できる仕様となっており、第三者からの攻撃が比較的容易な状態であると考えられた。

19年7月4日にセブン&アイHDが行った記者会見では、19年7月1日のサービス開始時点から累計で5500万円の不正利用があったと発表があった。

小林強社長は記者の「セキュリティを強化する目的で導入する二段階認証を導入しなかったのはなぜか」という旨の質問に対し、質問の意図がわからず、ポカンとする素振りを見せた。そのほかにも、先述のようにアプリの仕様が攻撃に対して非常に弱いものであるにもかかわらず、「脆弱性はない」と断言するなど、非常に不安を残す対応であったことは否定できないだろう。

被害が相次ぐだけでなく、企業のトップがこういった対応を続けて消費者に「スマホ決済は危ない」というイメージをつけてしまった場合、せっかく盛り上がったムードにも水を差すことにもなりかねない。

とはいえ、消費者側も店舗側も導入コストがかからず、スタートアップで大幅な還元キャンペーンのある電子マネーの勢いはしばらく衰えることはないだろう。クレジットカード会社にとっては、雌伏の時といえそうだ。

(写真=時事通信フォト)
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