トップである井阪隆一社長は直接説明しなかった

年初来、セブン&アイ・ホールディングス(セブン&アイ)の株価が軟調だ。同業他社と株価騰落率を比較しても、セブン&アイの株価はやや見劣りする。その背景には、トップ人事をめぐる組織の混乱がありそうだ。多くの投資家が、そうした状況に不安を強めている姿が浮き彫りになる。

また、セブン&アイが満を持して投入した、スマートフォン決済「7Pay(セブンペイ)」が不正アクセス問題の影響も大きい。9月末でセブンペイは廃止される。セブン&アイが、キャッシュレス社会への対応を進める上で、この展開は大きなインパクトを持つはずだ。

井阪隆一社長
写真=時事通信フォト
記者会見するセブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長=2019年4月4日、東京都千代田区

デジタル社会において、ユーザーが安心できる情報セキュリティー環境の実現は欠かせない。同社は、しっかりとしたシステムを作ることができず社会の信頼を失ってしまった。さらにユーザーに被害が及ぶような事態にもかかわらず、トップである井阪隆一社長は事態の対処方針などを直接説明しなかった。今後、同社がどのように組織をまとめ、社会の信頼を回復するか対応が問われる。

セブン&アイの経営を見ていると、業績そのものはよい。2019年度第1四半期の連結決算内容を見ると、営業利益は過去最高を更新した。しかし業績の多くの部分を支えるのは前トップが築き上げた“レガシー=遺産“であるようだ。

増益を支えている要因は、コンビニエンスストア事業だ。24時間営業の是非をめぐって、同社とコンビニオーナーの意見対立が続いているにもかかわらず、国内のコンビニエンスストア事業は増益を確保している。