「夏バテ」を防ぐにはどうすればいいのか。日本体育大学の杉田正明教授は「疲労回復のためにはシャワーより入浴のほうが効果的だ。私がFIFAワールドカップでサッカー日本代表をサポートしたときは各国の拠点を転々としたが、必ずお風呂があるホテルに宿泊した」という――。(第3回)

※本稿は、杉田正明『トップアスリートが実践している世界最強の健康マネジメント』(アチーブメント出版)の一部を再編集したものです。

W杯サッカー「日本代表、戦いの軌跡」・喜ぶ本田
写真=時事通信フォト
1次リーグ・カメルーン戦の前半、本田圭佑(左から3人目)の先制ゴールで喜ぶ中沢佑二(右から2人目)ら日本代表イレブン。この勝利でチームは自信をつかんだ(2010年6月14日、南アフリカ・ブルームフォンテーン)

夏でもシャワーより入浴を勧めるワケ

夏になると湯に浸からず、シャワーだけで済ませる人も多いですが、入浴にはさまざまなメリットがあります。

私が2010年の南アフリカで開催されたFIFAワールドカップでサッカー日本代表をサポートしたときは、まずスイスで合宿をし、そこからオーストリアで練習試合などをこなし、最終的に開催地の南アフリカに行くといったスケジュールでした。

拠点を転々としましたが、どこも必ずお風呂があるホテルでした。なぜなら疲労回復には、入浴はとても重要だからです。チームとしての考えでそのような配慮がなされていてすばらしいと感じました。

入浴の大きなメリットは次のとおりです。

①体を温める
②水圧で新陳代謝を良くする
③浮力でリラックス効果が得られる

スポーツ選手を対象に、5日間入浴した場合とシャワーだけの場合で、太ももの裏側の柔軟性がどう変化したかを調べたところ、お風呂に入ったほうがよりリラックスでき、筋肉の柔軟性が高くなって怪我をしにくい体になっていることがわかりました。

ぬるめのお湯+炭酸ガス入り入浴剤が効果的

北海道大学で温泉専門医として知られる大塚吉則教授によると、効果的な入浴法は、ぬるめのお湯(37~39℃)に浸かり、額にうっすら汗がにじむくらいまで温まることだとされています。この方法により、リラックス効果が高まり、疲労回復が促進されるそうです。

たとえば最近では、炭酸ガス入りの入浴剤があります。何も入れないままのお湯よりも、炭酸ガス入りの入浴剤を入れたお湯に浸かったほうが、体の中の血液の流れも良くなります。

これは、炭酸ガスが毛穴から皮膚内に入ると、体はガスを異物と感じ、それを排出しようとして血管を広げるからです。

さらに炭酸ガス入りの入浴剤を入れたとき、コルチゾールというストレスホルモンの値が下がることもわかっています。ですから、ストレス軽減にもつながるというわけです。

また、一方で、入浴をすることでオキシトシンというホルモンの値が上がることもわかっています。オキシトシンは別名愛情ホルモンとも言い、オキシトシンが増えると幸福感が得られることが実証されています。

つまり、入浴をすることで体だけでなく心の疲れも回復できるのです。