「『収入を得るため』『自分の生活のため』――若者は安定ばかりを望んでいる。それでいいんですか、ということを伝えたかったんです」。

なぜ全国最年少の市長を目指したのか

鈴木直道(すずき・なおみち)
北海道夕張市長。1981年3月、埼玉県生まれ。99年に東京都入庁。働きながら法政大学法学部を2004年に卒業。在学中は体育会ボクシング部で主将を経験。08年、夕張市へ派遣。内閣府地域主権戦略室への出向を経て、10年11月に退職。11年4月から現職。13年、「ダボス会議」の世界経済フォーラムによりヤング・グローバル・リーダーズ(YGL)に選出。

若い世代を対象にした「岩波ジュニア新書」の1冊。出版前に大人向けのレーベルとジュニア新書のどちらがいいですか、と版元から打診があったという。

しかし「高校生にメッセージを届けたい」という思いから、この形での出版に落ち着いた。

「昨年の『子ども・若者白書』では、何のために仕事をするのかという問いに対して『自分の夢や希望を叶えるため』という答えは15%しかありませんでした。圧倒的に多いのは『収入を得るため』と『自分の生活のため』。若者は安定ばかりを望んでいる。それでいいんですか、ということを伝えたかったんです」

著者・鈴木直道はそういう。全国唯一の財政再生団体である北海道夕張市に誕生した、全国最年少市長の手記である。

鈴木は安定した東京都職員の身分を捨て、財政破綻の町・夕張の未来を切り開くために「年収200万円ダウン、退職金なし」という悪条件の仕事に勇気をもって飛び込んだ。安定よりも夢を追え、というのは体験がいわせた本音だろう。