※本稿は、理学療法士キリツ『根本から体を整える 姿勢復元完全バイブル』(KADOKAWA)の一部を再編集、一部を書きおろししたものです。
筋肉を鍛えても姿勢は改善しない
理学療法士として10年以上、姿勢の改善に取り組んできました。その中で、私はあることに気づきました。
いくら弱い筋肉を鍛え、硬くなった筋肉を伸ばしても、根本的な姿勢の改善には繋がらないということです。
ストレッチや筋トレ、整体といった従来の方法は、崩れた姿勢を「外側から」整える方法です。
一時的に効果があったとしても、すぐに元に戻ってしまう、あるいは別の場所に負担がかかってしまう…そんな経験はありませんか。
これは、根本的な原因に対処していないからです。そこで、神経生理学・脳科学に基づいた、体に本来備わっている姿勢コントロールシステムを活性化させるアプローチを確立しました。
無理に矯正するのではなく、眠っている体の力を目覚めさせることで、自然と美しい姿勢が身につきます。自然だからこそ、効果が持続するのです。
本記事では、デスクワークやスマホの使用によって、現代人の多くが抱えている「ストレートネック(亀首・スマホ首)」の解消法を取り上げていきます。
姿勢が悪くなる原因とは?
ですがその前に、「なぜ、あなたの姿勢が悪くなってしまうのか」その背後にあるメカニズムをまずは、解説していきます。
姿勢が悪くなる原因は、大きく分けて「重力の影響」と「体の重心の位置」の2つに集約されます。
私たちは常に、地球の中心に向かって働く「重力」の影響を受けています。重力に対して、体の筋肉が適切に働いていないと、体は徐々に重力に負けてしまい、姿勢が崩れてしまうのです。
例えば、長時間デスクワークをしていると、頭の重みで背中が丸くなり、猫背になってしまいます。これが、重力に負けて姿勢が悪くなっている典型的な例です。
また、人間の体は、常に「重心」を一定の位置に保とうとするメカニズムが備わっています。
例えば、猫背の状態で長時間座っていると、頭が体の軸よりも前に出てしまい、重心が前方に偏ってしまいます。
この状態から立ち上がろうとすると、そのままでは前に倒れてしまうため、体は無意識に腰を反らせたり、骨盤を前に突き出したりして、バランスをとろうとします。その結果、反り腰やスウェイバック(※上半身が下半身より後ろに位置し、骨盤が体の前方に移動している姿勢)といった姿勢となってしまうのです。
このように、重心の位置がずれた状態になると、体はバランスをとろうとして余計な負担をかけてしまい、それがさらなる姿勢の悪化に繋がってしまうのです。
ここまで見てきたように、悪い姿勢は、重力にうまく抵抗できなかったり、重心をうまくコントロールできなかったりすることが大きな原因となっています。
つまり、悪い姿勢を根本から改善するためには、単に「筋肉が硬い」「筋肉が弱い」といった部分的な問題だけでなく、「重力」と「重心」という、体全体に影響を与える要素を理解し、コントロールすることが重要なのです。
では、具体的にどう対処すればいいのか。ここでは重要な知識と、最低限やっていただきたい簡単な実践法をお伝えします。大きくは3つの要素です。