※本稿は、理学療法士キリツ『根本から体を整える 姿勢復元完全バイブル』(KADOKAWA)の一部を再編集、一部を書きおろししたものです。
良い姿勢を維持するためには「呼吸」が大切
姿勢を良くしようと意識しても、なかなか思うようにいかないことがあります。まるで水の中で溺れそうになった時のように、頑張れば頑張るほどうまくいかないものなのです。では、どうすれば自然にいい姿勢を維持できるのでしょうか。
その答えの一つが、「呼吸」にあります。
私たちは1日に約2万回も呼吸をしています。この日常的な動作を改善することが、姿勢を良くするヒントの一つとなります。
しかし、ここで注意が必要です。呼吸を「良くしよう」と頑張りすぎるあまり、深く呼吸をしすぎると、かえって逆効果になることがあります。
必要以上に息を吸い込もうとして、体に入る息の量が増えてしまい、かえって息を取り込む能力が落ちてしまうのです。さらに、頑張ることで体に不必要な緊張が走ってしまいます。
これは姿勢にも悪影響を与えます。
逆に、良い呼吸ができるようになると、体の緊張が解け、自然と姿勢が整います。これが、呼吸を改善することで姿勢が良くなるメリットの一つです。
さらに、適切な呼吸は体のインナーマッスルを自然と働かせます。それも1日に約2万回です。この繰り返しが、姿勢を改善する大きな力となります。
呼吸は、主に横隔膜と腹筋の働きによって行われます。これらの筋肉が、お腹の圧力を巧みにコントロールすることで、肺に空気を入れたり、出したりしています。
実は、このお腹の圧力コントロールこそが、姿勢を維持する上でも非常に重要なのです。
体幹を安定させ、良い姿勢を保つためには、適切な呼吸が欠かせません。これが、呼吸が良くなると姿勢が良くなるもう一つの理由です。
呼吸の改善には“呼吸量を減らす”
では、どのように呼吸を改善すればよいのでしょうか。
意外に思われるかもしれませんが、それは「呼吸量を減らす」ことです。
「呼吸を良くするには、深くたくさん息を吸わなきゃ」そう思っていませんか。しかし、実際は逆なのです。呼吸量を減らすことで、息を取り込む能力が上がり、自然と無理のない呼吸ができるようになります。これにより、副交感神経が優位になり、ストレスの少ない良い呼吸が可能になります。
呼吸量を減らすための具体的な方法としては、まず「鼻呼吸」を心がけましょう。鼻呼吸は、口呼吸に比べて自然と呼吸量が少なくなるため、無理なく実践できます。
さらに、鼻呼吸には横隔膜の動きを活性化する効果も期待できます。横隔膜は、呼吸の際に重要な役割を果たす筋肉の一つです。横隔膜が活発に動くことで、質の高い呼吸が可能になるでしょう。
呼吸をラクにするためには、体の緊張を解きほぐすことも重要です。特に、腰や胸の筋肉が硬くなると、肋骨の動きが制限され、呼吸を阻害してしまいます。
腰や胸のリリースエクササイズを定期的に行い、呼吸しやすい体作りを心がけましょう。
少ない呼吸量でも、ラクに過ごせる体作りも大切です。