※本稿は、小林弘幸『心と体が乱れたときは「おてんとうさま」を仰ぎなさい』(草思社)の一部を再編集したものです。
心と体をコントロールする「交感神経」と「副交感神経」
よく知られるように、自律神経には「交感神経」と「副交感神経」とがあり、交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキの役割を果たしています。
交感神経が優位になるのは、仕事で緊張しているとき、他人と何かを争っているとき、身の危険を感じたときなどです。そういうとき、交感神経はアクセルをグイッと踏み込んで心身を戦闘態勢に移行させます。すると、呼吸が速くなり、心拍数や血圧が上がり、血管はキュッと収縮して、心と体がより大きな力を生み出せる状態へとシフトするわけです。
一方、副交感神経が優位になるのは、ひとりでくつろいでいるとき、寝ているとき、家族で談笑しているときなど。そういうとき、心身がリラックスした状態でいられるのは、副交感神経のブレーキがかかっているおかげです。このブレーキがかかると、呼吸が落ち着き、心拍数や血圧が下がり、血管が適度に拡張して、心と体がより効率的に休める状態にシフトするのです。
自律神経のバランス傾向には「4つのタイプ」がある
このように、交感神経と副交感神経は、互いに異なった働きをしながら、そのときの状況に応じて私たちの心と体をコントロールしています。自動車はアクセルとブレーキをバランスよくかけてこそうまく乗りこなせるものですが、自律神経もそれと同じで、交感神経のアクセルと副交感神経のブレーキがバランスよく働いていることが非常に大事になるわけです。
ただ、自律神経は「バランス」だけでなく、「レベルの高さ」も重要です。自律神経が最高の状態で機能するのは、交感神経と副交感神経の両方が「高いレベル」で「バランスよく」働いているときなのです。図表1のマトリクスを見てください。図の縦軸が交感神経のレベルで、横軸が副交感神経のレベル。自律神経のバランス傾向には4つのタイプがあることが分かりますね。
それぞれの特徴を簡単に説明しておくと、まず、Aは交感神経と副交感神経の両方とも高いタイプで、これがもっとも理想的な状態です。アクセルとブレーキの両方がハイレベルで安定していると、心身を絶妙のバランスでコントロールすることができます。この状態を維持していれば、病気になることもなく、仕事でも生活でもすべてにおいて自分の力をいかんなく発揮していけることでしょう。