※本稿は、小林弘幸『心と体が乱れたときは「おてんとうさま」を仰ぎなさい』(草思社)の一部を再編集したものです。
大谷選手が学んだ「ゴミ拾いは運拾い」という教え
もはや大谷翔平選手を知らない人は誰もいません。みなさんは、大谷選手がメジャーリーグのロサンゼルス・エンゼルスにいた頃に「グラウンドに落ちたゴミを拾う行動」が話題になったのを覚えていらっしゃるでしょうか。
誰もが見逃してしまいそうな小さなゴミを目ざとく見つけては、スッと腰をかがめて拾い、当たり前のように自分のポケットに入れる――。さりげなさがとてもカッコよかったですよね。こうした彼の行動はメディアで繰り返し報道され、アメリカの人々からも感嘆符つきで称賛されていました。
それにしても、大谷選手はいったいどうしてゴミ拾いという行動をするのでしょうか。マスコミから投げかけられたこの質問に対し、大谷選手は「僕は人が捨てた運を拾っているだけです」と答えています。
どうやら、グラウンドのゴミ拾いのルーツは、大谷選手の母校・花巻東高校時代にあるようです。同校では、「ゴミ拾いは運拾い」という教えが伝統のようになっていて、野球部でもグラウンドの小石やゴミを拾ったりダッグアウトをきれいに掃除したりするのがごく当たり前の習慣になっていたといいます。
「日々のちょっとしたこと」をおろそかにしない
また、花巻東高校では生徒の夢を実現させる「目標達成シート」を書かせる独自の指導をしています。テレビの報道やネットの記事でご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、この「目標達成シート」はマンダラチャートとも呼ばれるもので、枡目シートの中央に一番大きな目標を書き込んで、その周りの枡目に大目標を達成するために必要な小目標や行動目標を書き入れていくシステム。
ちなみに高校1年時の大谷翔平選手は、枡目シートの中央に「ドラフト1位8球団指名」と大目標を書き込んでいます。そして、その大目標を実現させるために必要なこととして、野球のスキルアップ項目とともに「運」という項目を加え、「運」をよくするために行うべき行動目標として「ゴミ拾い」「部屋の掃除」「あいさつ」「道具を大切に扱う」といった言葉を書き並べています。
おそらく、大谷選手は、この頃からこうした「日々のちょっとしたこと」をおろそかにしない習慣がついていたのでしょう。だから、グラウンドに落ちた小さなゴミを拾うのは、彼にとって当然のこと。ゴミを拾ったり掃除や片づけをしたりすることで自分の運がよくなるのであれば、ルーティンとしてやらない手はない。もちろんその運によって、その日によいパフォーマンスを発揮できるのなら言うことはありません。ですから、たぶん「ゴミを見つけ出して拾うことができたら、その日はラッキー」というくらいの気持ちがあるのかもしれません。