病気にかからず、健康を保つにはどうしたらいいのか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「病院に行くほどではない不調にはやく気づくことが大切だ。体調の小さな変化を把握するために、朝の習慣にしてほしいことがある」という――。(第2回)

※本稿は、小林弘幸『病院に行くほどではない不調に医師がしたこと』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

不調は「体重」にあらわれる

体重の増減が生活習慣病と深く関係していることは、さまざまなデータを見てもあきらか。

今、病名のつかない不調を抱えている人は、診断名のつく病気にならないように、最低でも現在の体重を維持することが重要。生活習慣病など病気の予備軍にかかっているならば、今より少し体重を減らすようにしたいところだ。

体重計
写真=iStock.com/Ake Ngiamsanguan
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実は、私が体調復活の兆しをしっかり感じられたのは、体重がきっかけだった。私のベスト体重は65kg。しかし、不調を感じながら過ごしたおよそ3年間は、どれほど暴飲暴食をしても63kgより太ることがなかったのだ。

最初こそ、食べすぎても体重が増えないのでラッキーだと思っていたけれど、途中からさすがにこれはおかしい、歯車が噛み合っていないようなモヤモヤとした体調の悪さが自分を太らせないのだ、と考えるようになっていった。

そして、2022年の年末に腕の手術をし、年明けからはリハビリも兼ねて新しい習慣も取り入れ、体調が上向いてきているのを実感し始めたころ、なんと体重が67kgまで一気に増えた。

食べすぎたら、その分だけ体重が増える。当たり前のことが当たり前に起こる体に戻ったのが嬉しかったし、体重が増えたことを喜ぶという経験は、人生で初めてだったと思う。その後、毎朝1時間ウォーキングをするなどして、1カ月かけてベスト体重まで戻した。

体重を減らす努力が成果としてきちんと表れる。これも、体が健康だからこその反応で、自分の体は元気に向かっている。そう確信を持てる嬉しい出来事だった。

毎朝、体重計に乗るだけでいい

現在は、ベスト体重の65kgをキープできている。私は長年体型が変わらないので、それを羨ましがる人はとても多いのだが、私の感覚では体重をキープすることはそれほど難しいことではない。

多くの病院で「体重管理」なんていう言葉が使われるから難しくなる。私なら患者さんに「毎朝、体重計に乗るだけでいいですよ」と伝えます。体重計が示す数字が、自然と自己管理能力を高めてくれるからだ。

気づいたら体重が増えている人は、「最近、食べすぎているな」とか「この一週間あんまり動いていないな」という、自分の感覚を頼りにしていませんか? それが、気づいたら2kgも3kgも体重が増える原因なのです。

毎朝、体重を測れば、数字があなたの体の状態をはっきりと教えてくれます。「今日は500g増えている。やっぱり、ここ2、3日食べすぎていたからな」と、結果と感覚がきちんとリンクする。

これが、意識づけとして大きな効果を発揮するのです。私は朝の計測でベスト体重であれば、その日の食事は何も気にせず好きなものを食べます。ベスト体重を500g以上上回っていたら、昼食や夕食を軽めにしたり早めの時間に食べ終えるなどのちょっとした工夫で調整をする。

たったこれだけのことで、体調不良の時期を除いた何年間も体重維持ができています。不調にはいつも気づかぬうちに陥っていくことが多いので、自分では見逃しがちな心身の変化を把握するためにも、体重という数字はとてもいい判断基準になりますよ。