※本稿は、上大岡トメ『マンガで解決 親の認知症とお金が不安です』(主婦の友社・監修:杉山孝博、黒田尚子)の一部を再編集したものです。
認知症の人の気持ちを想像できれば対処方法が見つかり介護もラクに
認知症介護がつらくなるのは、認知症の人の行動が「理解できない」からではないかと思います。病気の特性のために不可解な言動をしますし、こちらがどんなに丁寧に説明してもわかってもらえません。しかもひどいもの忘れだけでなく、お金や物に対する異常なまでの執着や、出かけたら戻ってこない「徘徊」(道迷い)、介護者への暴言、たび重なる失禁など、認知症からくる症状はさまざまで、しかも個人差があります。どうすればいいかの正解はありません。
一つだけいえるのは「その行動には理由がある」ということです。脳の疾患からくるものもあれば、周囲の人の言動が影響しているものもあります。理由に合わせて対応することで「介護が驚くほどラクになった」という声はよく耳にします。
たとえば、夜中になると目を覚まし、家族をわざわざ起こす認知症の人がいます。夜に起こされる家族は大変なストレスですが、これは認知症による見当識障害で、自分は今どこにいるのかわからなくなったせいだと思われます。あなただって、深夜に真っ暗闇の中で目を覚ましたとき、まったく見知らぬ部屋だったらどうでしょう。こわくて家族を起こしてしまうのではないでしょうか。その恐怖が理解できれば、部屋に明かりをつけておく、目に見える場所に家具を配置する、ラジオを小さな音で流すなど、いろいろな対応策が考えられるのです。
でもそれは認知症に限ったことではないでしょう。私たちはこれまでに何度も「理解できない」「どうして○○なの?」と、人間関係にとまどってきた経験があるはずです。そしてそのつど相手の立場や状況、気持ちを思いやりながら乗り越えてきました。認知症の人との関係だってそれは同じなのです。そして親の気持ちに思いを寄せたとき「お母さん(お父さん)は何も変わらないんだ」と実感することも多いはずです。
・人間関係は相手の気持ちを察し、思いやることから始まる。
・「理由」がわかるようになれば介護もぐんとラクになる。
・理解できないときには「認知症だからしかたがない」と割り切る。