豊橋にある老舗和菓子店「お亀堂」は、看板商品のあん巻きとブラックサンダーのコラボ商品を開発。8年で500万個を売り上げる大ヒットとなり業績はV字回復、2024年は過去最高益となった。しかし、その開発の背景には和菓子屋と洋菓子屋の“激闘”があった――。

「ゆかり」「うなぎパイ」を超えた…

販売は愛知県東三河のみ。日持ちは3日間。にもかかわらず、ピーク時には1日1万個以上を売り上げた人気土産がある。

豊橋駅のお土産コーナーにズラッと並ぶブラックサンダーコラボ商品
豊橋駅のお土産コーナーにズラッと並ぶブラックサンダーコラボ商品(撮影=山田智子)

「ブラックサンダーあん巻き」

豊橋市にある創業75年の和菓子店「お亀堂」と、日本で一番売れているチョコレートバー「ブラックサンダー」のコラボ商品だ。2017年11月の販売開始から1年半で100万個を販売。一時的なブームに終わらず、発売から8年経った今も売れ続けている。

ブラックサンダー誕生の地である豊橋。駅のお土産コーナーには、数多くのコラボ商品が並ぶ。その中でも、ブラックサンダーあん巻きはダントツの売り上げを誇る。

豊橋駅の月間お土産ランキング(JR東海リテイリング・プラス調べ)で、2024年7月に名古屋のNo.1土産「ゆかり」を抜いて2位に浮上すると、同年11月には浜松を代表する銘菓「うなぎパイ」を抑えて首位に。その後も2位の座を堅持し、累計約500万個を売り上げた。

だが、このロングセラーが誕生するまでには、お亀堂の森愼一郎会長(当時は社長)が「2度とコラボはやりたくない」と表現するほどの悪戦苦闘の日々があった。

イナズマ級の美味しさ

イナズマが走った。大げさではなく、はじめて「ブラックサンダーあん巻き」を口にしたとき、衝撃を受けた。

ほんのり甘くてもっちりとした皮に包まれているのはあんこではなく、滑らかな口溶けの濃厚なチョコレートクリーム。時々、ザクッザクッとブラックサンダーが主張する。

あん巻きも、ブラックサンダーも、東海圏の人間には慣れ親しんだ味。だが、一口食べて、『こんな感じだろう』と高を括っていた舌が驚いた。単なる1+1ではない。想像をはるかに超える、今まで味わったことがない、唯一無二のあん巻きだった。

ブラックサンダーあんまきの断面
撮影=山田智子
ブラックサンダーあんまきの断面

「味にはとにかくこだわりましたね。知名度の高いブラックサンダーとコラボをして、一時的に話題になったとしても、美味しくなければ長く愛される商品にはなりませんから。

ただ、その『美味しさ』の基準が、和菓子と洋菓子では全く違うんですね。同じお菓子だったがゆえに、すり合わせが難しかった。

加えて、ブラックサンダーも、あん巻きも、双方の看板商品。有楽製菓さんはブラックサンダーのブランドにふさわしいクオリティを求めるし、私たちには『うちは和菓子屋だよ』という想いがある。互いに譲れないところがありました」

有楽製菓との調整役を務めた、お亀堂の森会長は当時を思い出して苦笑いを浮かべる。