歩くことの効果は何か。長尾クリニック院長の長尾和宏さんは「歩くときは複数のタスクが脳の中で同時に行なわれ、脳の中でさまざまな回路が活性化されている。創造性が必要な仕事や判断で行き詰まったら歩くといい」という――。
※本稿は、長尾和宏『歩く人はボケない 町医者30年の結論』(PHP新書)の一部を再編集したものです。
移動することは生物にとって本能であり快楽
歩かない人の中には、「いや、もう年だから、そんな苦しいことはできない」と言う人がたくさんいます。ただ、その人たちが思っているよりも、実際にやってみると意外に楽しいものです。歩行は本能です。
北海道を旅行したとき、道路を歩き回る野生動物をたくさん見ました。鹿が出てきたり、野犬が歩き回ったりしていました。彼らは移動することが本能です。
動物はずっと同じ場所にとどまるほうが苦痛で、移動するほうが楽しいのでしょう。
地上の動物だけでなく、海では魚が泳ぎ回り、空には鳥が楽しそうに飛んでいます。移動することは、生物にとっては本能で、おそらく快楽です。人間も、同じ場所にずっと居続けることは苦痛で、時に刑罰となります。
歩くうちに脳の中にエンドルフィンという神経伝達物質が出てきます。これは脳内麻薬と言われる快楽物質です。マラソン中にエンドルフィンが分泌されると、脳が「ランナーズハイ」になります。これは有名な言葉ですね。
また、歩行時に脳内でセロトニンという神経伝達物質が分泌されることもわかっています。セロトニンは「幸せホルモン」と呼ばれ、脳に幸福感をもたらします。また、セロトニンはドーパミンやノルアドレナリンの分泌を抑制します。

