1000日間毎日30km歩き回る修行僧の幸福感
天台宗の修行の中に千日回峰行というものがあります。7年をかけて延べ1000日間、毎日30キロメートル以上を歩き回る厳しい修行です。比叡山の山中や山から下りて京都の街中を歩き回ります。かなりの勾配がある山道をやや早足で歩きます。
千日回峰行を2回達成された酒井雄哉さんの本を読むと、歩いているうちに頭の中が一種の幻覚状態になるそうです。歩行でエンドルフィンなどの脳内麻薬が産生されると考えられています。
ただ一般の人にこのような歩行はお勧めしません。疲労や怪我や骨折が心配です。
1日20〜30分も歩けば充分です。
20〜30分歩くだけでも、脳の中にエンドルフィンやセロトニンが出てもう少し歩きたくなります。気がついたら1時間歩いていた、なんてことになれば最高です。
なお、千日回峰行で幸福感に包まれる理由はもう一つあります。
食事の回数が少なくなることで、脳細胞のエネルギー源がブドウ糖からケトン体(体内で脂肪が分解されて生成される物質)になるからです。あまり眠らなくても修行を続けられる理由もそこにありそうです。
歩くと創造性が高まる理由
歩いていると、ふといいアイデアが浮かんできたという経験は、誰にでもあるでしょう。
私も、歩いているときにいろいろな考えが浮かんできて、帰宅後、それらをパソコンに入力しています。
デュアルタスク、マルチタスクと呼ばれますが、歩くときは複数のタスクが脳の中で同時に行なわれています。何もしていないように見えても、脳の中でさまざまな回路が活性化されているのです。
作曲家や作詞家が歩いているときにヒット曲が思い浮かんだ、という話はよく聞きます。どんなに優秀なヒットメーカーでも百発百中というわけにはいかず、曲作りに行き詰まります。
一晩中考えてもメロディが思い浮かばないときに、外に出て10分歩くうちにふといいメロディが浮かび始めるそうです。
昔から多くのクリエイティブな作品が歩行中に生まれてきたのは、歩行で脳が活性化し、活性化した脳の中で次々と新しい組み合わせが生まれるためでしょう。無から有が湧き出してくるようなイメージです。
スタンフォード大学が2014年に行なった「創造性と脳」の研究によると、48名の学生に、創造性を求める課題について、まず白い壁しかない屋内でじっと座った状態で回答してもらい、次に屋内でウォーキングしながら(ルームランナーを使用)回答してもらった結果、前者より後者のほうが、81%の学生でスコアが上昇し、平均60%上がっていたそうです(※1)。
※1 Oppezzo M et al. Give your ideas some legs: the positive effect of walking on creative thinking. J Exp Psychol Learn Mem Cogn 2014 Jul;40(4):1142-52.doi: 10.1037/a0036577. Epub 2014 Apr 21.


