未知の材料、チョコレートを一から研究する
「うちは饅頭屋だから、チョコレートの特性が全く分かっていなかったんですよ」
和菓子屋のお亀堂の製造現場には、ブラックサンダー以外のチョコレートがなかった。石川専務はあん巻きの皮を開発した時と同じように、片っ端から全国のメーカーのチョコレートを取り寄せ、研究を始めた。
目指したのは、「目隠しをして食べても、ブラックサンダーあん巻きだとわかるくらいの味と食感」。そのためには、ブラックサンダーの特徴である、ココアクッキーのほろ苦さとチョコレートの甘さ、そしてザクザク食感を表現する手段を考えなければならない。
一般的なチョコレートは、冷やすと固まってしまう。チョコレートを溶かして、砕いたブラックサンダーを混ぜ込んでも、固まってしまえば、ブラックサンダーをまるごと入れたのと変わらなくなる。ブラックサンダーのザクザク感をつぶ立たせるためには、ベースにあんこのような柔らかさをもつチョコレートが必要だった。
幸運にも、油脂メーカーから、常温でも固くならないチョコレートクリームが開発された。早速取り寄せ、砕いたブラックサンダーを混ぜ込んでみた。「これだ」。ようやく、光が差した。
細かいことだが、土産品であるブラックサンダーあん巻きは、夏場に長時間持ち歩くことも想定される。「暑くてもやわらかくなりすぎないように、夏と冬ではチョコレートの配合を変えています」。チョコレートならではの難しさも痛感した。
どうやってブラックサンダーを砕くか
「残る問題は、どのようにブラックサンダーを砕くのかでした」(石川専務)
試作品の段階では、職人が包丁やめん棒で砕いていたが、それでは作業効率が悪く、量産には向かない。だが、ミキサーを使うと、つぶが揃ってしまい、ザクザク感が表現できない。
「何か方法はないか……」。作業場で思案していた時、鬼まんじゅうを作っている職人がふと目に留まった。鬼まんじゅうとは、東海地方の郷土菓子で、角切りのさつま芋が入った蒸しまんじゅう。ごつごつしたさつま芋が鬼の角や金棒に見えることが名前の由来と言われている。お亀堂の人気商品の一つだ。
さつまいもを1cm角くらいのダイス状に切る機械で、ブラックサンダーをカットしてみる。それをやわらかいチョコレートクリームに混ぜ込み、皮で包む。ブラックサンダーの「ザクザク」とあん巻きの「もちもち」の両方が際立つ、最適なバランスだった。ついに、目をつぶって食べてもわかる「食感」を実現する「生産工程」が確立した。


